専業主婦になり行き場を失った気持ち。そして私はエッセイに出会った

私は、総合病院で看護師として勤務していた。6年半勤めたが、不妊治療や流産を機に転職することを決意した。決意してから、いざ退職間近となった時に、なんと妊娠することが出来た。同時に私の専業主婦生活が始まった。
働いていた時は、何度も辞めたいと思ったし、1日でいいから休みが増えないものかと毎日思って過ごしていた。専業主婦っていいななんて憧れも持っていたが、金銭面的にも気持ち的にも、まさか私が専業主婦になるとは思っていなかった。
退職して専業主婦生活が始まったときは、妊娠初期の悪阻でかなり体調を崩していて、働かなくていいなんて最高だなと感じていた。だが安定期を迎えた頃から、徐々に体調も回復し、毎日が退屈だと思うようになった。金銭面や妊娠出産に対する不安も強くなってしまった。日中は友人や家族と過ごさない限り話す人もおらず、この気持ちをどうに消費したらいいのかと悩む日々だった。
そんな時に、私ってやってみたかったことって何かあるだろうかと考えた。小学生の頃から宿題の作文は大嫌いだったが、時々思い立った時だけ日記を書いたり詩を書いたりしていた。私は昔から、人に自分のありのままの気持ちを伝えることが苦手だった。自分の思いや意思は伝えずに、そっと胸の中にしまっておくことが多かったように思う。
幼少の頃を思い返してみるとこんなこともあった。私の両親は喧嘩が多く、家に帰りたく無いと思うことも多々あった。だが、その気持ちを両親にぶつけたところでどうにもならなかったし、友人にも話したく無いとおもっていた。誰かに聞いて欲しいわけでは無いけど、どこかで発散したいような嫌な気持ちも全て文章に表現していた。
自分の気持ちや出来事などを文章にして表現することで、気持ちがスッと楽になるし、なんだかわくわくした気持ちになれるということを改めて思い出した。
そんなことを思い出して、せっかくならこの機会にエッセイを書きたいと思い、色々と調べていたらエッセイを募集しているところが意外にあることに気付き、応募することにした。
エッセイをいくつか書いてみて、話し言葉では表現できないような自分の気持ちを表現することが出来た。今、仕事をしていないことや専業主婦になってしまったこと、不妊治療をしなければならなかったことは、私にとってマイナスなことだと思っていた。エッセイはメールとは違い、必ず読んでくれる相手がいるわけでは無いが、私の経験やこの気持ちが誰かの目に留まり、共感してもらえたり、勇気を与えられるものになればいいなと段々と感じるようになった。
今も働いている未来があったら、きっとエッセイとは出会えなかっただろう。自分の気持ちを誰かに話すことでしか消費できなかっただろうし、幼い頃に感じたわくわく感や爽快感をもう一度味わうことは無かったと思う。自分の気持ちを伝えることは、決して話す言葉だけでは無く、話せない時は文字にして表現していいんだとエッセイを通して改めて気づくことが出来た。この瞬間にエッセイと出会えて本当に良かったと思っている。誰にも読んでもらえないとしても、これからもエッセイを書いてありのままの自分を表現できたら幸せだと思う。
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