「その雰囲気ずるい」。ヘラヘラしてしまう癖をやめようと思った一言

「その雰囲気ずるい」
大学のゼミ発表後に同期から言われた言葉が、ずっと頭の片隅にあった。
ついニコニコ、ヘラヘラしてしまう癖。実力がないのに雰囲気で誤魔化してる、媚びてると言われたんだと思った。
実際、実力不足を感じていたし、尊敬する同期の言葉だったからグサっときた。本当にやめたいと思っていた癖だった。
昔から私は謂わゆる「癒し系」として扱われてきた。小柄、高めの声、マイペースがその主な理由だと思う。
「癒し系」とは?ゆるキャラ的な?ちょっと馬鹿にされてる?
私が理想とする「余裕のある女」のイメージからはほど遠く、ずっと違和感を持っていた。
だから、はっきりと言われた同期の言葉が響き、昔からのモヤモヤと相まって、変わろうとその時決めた。
社会人になってから人前で話す時は、いつもより声を低めに、笑わないようにして落ち着きある自分であろうと意識した。
でも簡単には出来なくて、結局ヘラヘラして、帰り道に相当落ち込むの繰り返し。
そんなこんなを続けて社会人8年目の先月、仕事を取るためのプレゼンでメインスピーカーになった。
初めての大役に緊張し、自分の声を録音して何度も聞いて思った。
「私、冷たくなってる…?」すましてて、そっけない感じ。
自分の唯一の取り柄かもしれない「その雰囲気」はどこにいったんだろう?
もしかしてあの時の私の方が良かった?
プレゼンまでは、今更何やってるんだという感情を押さえながら、なんとか「その雰囲気」を取り戻そうと練習し、とにかくやり切ったという感じだった。
だからプレゼン後、同僚に印象を聞いた時「いつもの雰囲気でやれてましたよ」と軽く返され、拍子抜けした。
え、取り戻そうとした努力は?というかいつもの雰囲気って何?もしかしたら私は変わってないのかもしれない。そもそもそんなに簡単に人は変われないということなのか。
その人が持つ雰囲気とは何なんだろう。
性格や見た目、服装、言葉、癖などで作られるのなら、雰囲気はきっとその人のコンプレックスの塊なんだろう。
でも多くの人はその雰囲気に惹かれて人を好きになるような気がする。
小さい頃の環境や遺伝によって作られた土台だとしても、コンプレックスを抱えて成長する中で、その人だけが作って来た、周りとの向き合い方があるんだと思う。
私はよく久しぶりに会う友達に、変わらないねと言われる。
私も友達のことを変わらないなと思う。見た目や考え方は変わっても、雰囲気は変わっていないと思う。
私もみんなも社会に出て、もがいて変わろうと苦しんでいる事がいっぱいあると思うのに。
残念だけど、「その雰囲気」は根本的には変えられないのかもしれない。
私たちが日々積み重ねている経験や感情は、”その雰囲気”に味を付け足していくだけなのかも。
そう思うと少し落ち込む反面、ちょっとほっとする。
ちゃんと続いているんだという感覚。
もしかしたらそんなに嫌いじゃ無かったのかもしれないし、もはや受け止めるしかないからかもしれない。
ただ、8年という時間を経て、変われない雰囲気のまま、それでもあのゼミ発表とは違って、今度はやり切ったと思えた。
私が持っていた「その雰囲気」は変わっていなくてもいいから、パワーアップしていたら嬉しいと思っている。
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