朝の陽ざしが少し強くなり、風に運ばれて薫る緑の匂い。深呼吸が気持ちいい。6月の札幌はようやく半袖で過ごしやすくなる季節。
思い出すのは、汗と泥だらけで仲間と全力で走った夏。

私の大学生活のすべてを捧げたラクロスが、教えてくれたこと

大学では、優勝を目指して活動するラクロス部がかっこよくて入部した。その年に入部した同期は、マネージャーを含めて16人。高校も出身も、性格もバラバラの個性豊かなメンバーで優勝を目指す4年間が始まった。

1年目の夏は、体力と基礎を身に着けるのに必死だった。先輩たちが繰り広げるパスキャッチの華麗さやグラウンドを走る姿、何度もミーティングをする姿、全てがかっこよくて憧れた。先輩と一緒にプレーしたり、アドバイスをもらえるのが嬉しかった。ポジションやユニフォームの背番号を選んで、先輩たちと同じにフィールドに立てるのが嬉しかった。

2年目の夏は、監督が加わった。同期の中でも試合に出る子がいた。試合を応援しながら、内心は悔しくて「もっとうまくなりたい」と思った。先輩たちは、本気で仲間や後輩に怒って、話し合って、技術を教えてくれた。優勝を目指すなら生半可な気持ちではいられないと覚悟ができた。

3年目の夏は、先輩と優勝を目指して戦った。同期も先輩も実習で、全員が揃っての練習がなかなかできない夏だったから、思うような攻め方や守り方ができず焦りがあった。私もポジションが変わり、慣れることに必死で周りが見えていなかった。チームに不穏な空気が漂う中、リーグ戦が始まった。辛勝しながらもつないだ、決勝へ行けるか決まる最後の試合。曇りの中、攻める姿の中に諦めた瞬間が垣間見えた。先輩戦った夏が終わってしまった。

念願の決勝戦!「もっと仲間とラクロスしていたい」と願った

4年目の夏は、優勝を掲げた夏。それだけだった。週に一度、ミーティングをして常に話し合い、相手チームの研究や自主練など、ラクロス漬けの日々を送った。真っ黒に日焼けした。笑いながら「家族や学科の友達よりも一緒にいるね」と話した。

私は求められるプレーができず、メンバーからも外されそうだった。中学・高校の部活では、いつもメンバーに選ばれていた私は初めて挫折を経験した。そんな私を同期は、全員で試合に出ようと練習に付き合ってくれたり、アドバイスをくれたりした。そして、始まったリーグ戦。私たちは勝ち星を増やし、念願の決勝戦に進むことができた。私たちの夏が伸びた。

仲間とまだ一緒にラクロスができる喜び。仲間とまだ一緒に過ごせる幸せ。支えてくれたマネージャーやコーチ、先生、家族。全員に感謝して迎えた決勝の日。陸上競技場から見えた景色は、とても広かった。後輩や先輩、家族、友人の声援が聞こえる。メンバーひとりひとりの横断幕が風に揺れる。絶対勝つ。気持ちをひとつにして挑んだ相手は、今季無敗のチーム。

試合開始!あっという間に1点取られた。修正できないまま4点取られた。点差が広がる。「落ち着いていこう!楽しんでいこう!勝てる!」と気持ちを引き締め後半戦へ。1点1点返してあと1点。まだ終わってない!まだ、みんなとラクロスをしていたい!しかし、あと1点が届かなかった。私たちの4年間が終わった。

私は目標に向かって努力した4年間で、大切なことを学んだ

今年は、同期と出会って10年目の年。卒業後の進路は、みんなバラバラで私も就職後、結婚して母親になった。結婚した同期も増えてそれぞれ忙しくしている。働く中で辛いことは多々あったが、あの4年間が私を強くしてくれた。

濃密だった4年間。朝練の前日に同期の家に泊まったり、片道5㎞を自転車で通ったり、合宿の余興も真剣に練習して、誕生日も祝い合った。楽しいこともたくさんあったけど、楽しいだけじゃ優勝はできない。次第に感じる、プレッシャーや重圧。その中で大切な仲間ができ、大切なことを学んだ。

仲間を信じること。
言いにくいことでも、言うことがやさしさになること。
諦めないこと。
たくさん悩んで、もがくこと。
優勝はできなかったけれど、努力は報われること。

今年は、甲子園やほかの競技も大会が中止や延期になってしまった。それぞれの努力を思うと悔しくてやりきれない。
けど、その努力してきたことはいつか違う形で花開く時がくると思うし、そこで出会った仲間との絆はこれからも深いと思う。
暑くて熱い夏の思い出。
そして、もうひとつあの時の私に言っておきたい。
「日焼け対策もしっかりね」と。