学校を卒業したら、一般企業に就職して、いずれは結婚して、子どもは…なんて、誰もが一度は必ず考えることではないだろうか。
それなりのお給料を貰えれば幸せに暮らせる。これは普通で、当たり前で。学生時代の私は何の疑いも持たなかった。

私には夢があった。
これが夢なんだとはっきり自覚したのは大学生の頃だったけれど、その夢は学生の私にとってはとても大きいものだった。
しかし、周りは当たり前のように就職をする。そんな中、自分ひとりがアルバイトを継続して、夢のために大学院へ進学するのは現実的ではなかった。
それに、大学院へ進学をしたからといって、必ず就職できる保証もない。
「頼むから正社員で就職してほしい」「お金もまともにないのに幸せになんてなれない、夢なんて所詮夢」という周りからの圧力。
私は夢への思いにフタをして、当たり前に就職活動をし、どこにでもいる普通の正社員になった。

安定したお給料をもらう喜びは一瞬だった

初任給をもらったあの日。お世辞にも高いとはいえない給料であったが、学生時代のアルバイト代とは全く違う達成感。
初任給で両親を少し高めのディナーに連れて行ったり、欲しかったものを購入したり。とても幸せだった。やっぱり就職して良かった。
だが、そんな思いは一年後には消え去る。人手不足に加えて、後輩に仕事を押し付け楽ばかりする先輩社員。
必死で働いてもお給料は微々たるものしか上がらない。安定したお給料を貰い、毎月のように大好きな旅行に出かけても、幸せと感じる時間は一瞬だけ。
貯金ができても全くと言っていいほど、幸せではなかった。
何のために働いてるのだろうか。お金はあるのにどうして。

思い出したのは、学生時代の夢

そんな時にふと思い出したのは、学生時代のあの夢だった。やりたいことがあったのになんで私は今ここで働いているんだろう。
涙が出た。くやしかった。真面目に働いても評価してもらえない職場にしがみついて馬鹿みたい。
そう思った瞬間、あっという間に正社員でいることに対する気持ちはどこかへぶっ飛んでしまった。
お金があったってこんなにも悲しいのだから意味がない。そうだ、正社員を捨てたっていいじゃないか。
気づけば、お給料のことは忘れて、やりがい、生きがいのために、転職しようと決めていた。
求人サイトを見ては、ペンを取り、数えきれない程の履歴書を書いた。
働きながら休日は転職活動に明け暮れた。
何か月転職活動をしたかもう忘れてしまったが、有難いことにその思いが通じ、
契約社員として採用して頂き、夢へのスタートを切った。

正社員を捨てて思うこと

正社員を捨てて丸2年がたった。まだまだ今の世界では新米すぎるほど、新米だ。
お給料は正社員の時に比べ少ない。貯金も微々たるもの。大好きな旅行も以前に比べてかなり回数が減った。
それでも大きな声を出して自信を持って言える。私は幸せであると。
もし大学時代の私に今会うことができるのであれば、こう言うだろう。
正社員が全てじゃない。お金があっても幸せじゃない。夢を諦めず追いかけてほしいと。