お金で買える愛の話
ーー私は学生時代を、1日10万円稼げる世界で生きていた。
今は7畳・ユニットバスのワンルームで、手取り24万円の一人暮らし。
簡単に言えば、風俗をやめて、新卒で普通のOLになった。私が風俗で働いていたのは整形をするためだったので、目的を果たした今、とくに夜の仕事をする意味もなくなったから、辞めた。
収入はガクッと減ったけど、今の生活を不自由だとは思わないし、前の生活も言うほど煌びやかではなかったのでとくに大きな変化はない。
夜のお仕事をしていたときに「金銭感覚がおかしくなりそう」という言葉を嫌というほど聞いたが、正直、金銭感覚と職業って全く関係ない。
確かに、ホスト狂いやブランドで全身固めている女の子もいたにはいたけれど、お金がなくたってキャッシングして風俗に来るおじさんもいたし、大学の友達だって、私よりよっぽどお金を使っている女の子は沢山いた。
お金で、幸せに近づくチャンスを買うことはできる。愛はどうだろう
お金を使うことって、麻薬みたいなもので、一部の人に対しては【使うこと】そのものが快感なんだと思う。これは3大欲求には入ってないけれど、食欲・性欲・睡眠欲・(金銭欲)みたいな感じで、形としては見えないけれど、多くの人が欲求として持っているものの一つ。権力欲と承認欲求と合わせて私はこれを「副3大欲求」だと思っている。
お金が人を幸せにするかと言われると、少し考えてしまうけれど、お金を得ることによって幸せに近づくためのチャンスを買うことはできる。
例えば、わたしはお金で顔を買ったわけだけれどそれは別の言葉で言えばコンプレックスをお金で改善したわけであって、お金で買えるのは物だけではない。希望も、夢も、愛でさえ時にはお金で買える。
そう、愛だってお金で買える。
でもそれは「限りなく愛のようなもの」であって、本当は愛ではないのもしれない。
「愛だけはお金で買えない」という言葉を、わたしも昔は信じていた。でも仕事をしてみて、愛情欲しさに何人もの諭吉を積んでいく人々をたくさんみてきて、一時の愛に溺れる瞳を見ていると、この人は今愛を買った気になっているんだなと思う瞬間もあった。
「人って、セックスには10万出さないんだよ」
ときどき、わたしのお店でランキングNo. 1の女の子が言っていた言葉を思い出す。
素人の援助交際の相場が1人3-5万。よっぽどの高級店は別かもしれないけれどお店でも一桁後半。
その子が教えてくれた、あるカラクリ。
セックスには10万も出さない。でも、その先の夢に使うお金は…
セックスには、ね。
要するに、セックスはお金を払えば誰でもできる。素人を捕まえてお金を渡すのだって。でもお店の女の子を「1人の女の子」として、心を虜にして彼女にすることは簡単なことじゃない。お話をして、外でデートをして、源氏名じゃない名前を呼んで、お互いを知る。そこに生まれるのは愛で、彼らはいつかは自分との間に生まれるかもしれない愛にどこか期待をしながら、気づけば何十万ものお金を使ってしまっている。
ーーそれを想像させるのが、お店の女の子の役割なんだよ。
お金から生まれた想像の産物が、本物であるかどうかは、もうその人次第でいいと思う。
紙切れで買った夢に振り回されながら生きたくはないと思うけれど、その夢のおかげで生き延びた経験に心当たりがないわけではない。この鼻があと少し高ければと思った夢の先を想像したからこそ、頑張れた労働がある。
お金があって困ることよりも、お金がなくて困ることの方がずっと多い。お金はやっぱり、大切だ。
お金をたくさん持つことじゃなくて。幸せと両立させる近道のヒントは
でも、お金が作ってくれた世界にどっぷり浸ってしまった時に。帰ってこれなくなってしまうことも帰って来たくなくなってしまうことも、本当にある。
そういうときは、何のためにお金が必要なのかを今一度考える。どんどん大きくなるお金への欲求に振り回されるんじゃなくて、あなたがお金に首輪をつけて、幻想丸ごと飼い慣らすのだ。
お金をたくさん持つことではなくて、お金と欲望をコントロールして、自分のほんとうに欲しいものに合った数字とライフスタイルに当てはめていくこと。
それが、お金と幸せの両立の近道へのヒントなんじゃないかな。
あなたの幸せの道の中、お金が良い意味での道標でありますように。