本来は食べることが好き。だけど、職場での昼食はプレッシャー
私は食べ物が大好きだ。食べることはもちろん、自分で料理を作ることも好きだし、なんなら食べ物を見ているだけでも心が満たされる。
そんな本来食いしん坊な私だが、あまり食欲の湧かない食事がある。職場での昼食だ。
今の職場は昼休みになると自席を片付け、その場で昼食を摂るのがお決まりの形となっている。自席と言っても、大きなデスクに各々の椅子とノートPCを置いているだけのため、仕切りや明確な境目はない。職場近辺はランチを食べに行けるお店もないため、外食する人も滅多にいない。そのため必然的に上司・同僚とは昼休み中も顔を合わせて過ごすことになる。
この時間が私にとってはプレッシャーとなっていた。
今思えば、学生時代に飲食店でバイトをしていた頃から「休憩時間中の食事」に対する苦手意識は始まったような気がする。
当時のバイトは8~17時のシフト制であり、計1時間の休憩があるものの、15分×4回という細切れの休み方だった。そのため昼食をゆっくり食べている時間は無く、元々食べるのが遅い私は時間内に食べ終わるために食べる量を減らすことを選んだ。おにぎり1個をガソリンにして一日中立ち仕事という生活を続けた結果、当時の自分史上最も痩せた体型となったのだ。
その後バイトを辞めると体重は元に戻り、当分はこのプレッシャーから解放されていたが、現在の職場で働き始めてから再び感じることとなる。
周囲を気遣う「自分ルール」に縛られる悶々とした日々
上述した環境である職場での昼食時には
・時間内に食べ終わらなければいけない
・きれいに食べなければいけない
・大きな咀嚼音をたててはいけない
・話の輪にも適宜入らなければいけない
等、誰に言われた訳でもないが「自分ルール」がいつの間にか形作られ、自分の首を絞める結果となった。
本当は麺類が食べたいけど麺をすする音は響くし、つゆを飛ばしてしまうかもしれないから却下。唐揚げ弁当を食べたい気分だけど、肉にかぶりつくのは恥ずかしいし時間内に食べるには量が多めだから却下。カレーを食べたいけど匂いを漂わせてしまうから却下……数々の食べたい気持ちに却下をし続けた私の昼食の定番は、自在にひと口のサイズを調整できるパンかおにぎりになった。(その影響で職場ではパン好きな人として認定された。)
食べる物には悩まなくなっても、食事中の会話がプレッシャーであることには変わりなかった。「食べている最中に話を振られたらどうしよう?」「私からも話題を振るべきだけど話のネタは何が適しているだろう?」「話を振った相手が食べている最中だったら悪いな」等と考えていると、どんどん萎縮してしまい何も言えなくなってしまった。
こんなに色々な考え事をしているのだから、楽しく食べられるはずもない。自分で作った「自分ルール」は気を使いすぎる私の癖であると自覚しつつも、どうすることもできずに悶々と苦しんでいた。こんな状況を1年以上続けた結果、自分史上最も痩せた記録を更新した。
身体だけでなく気持ちの面でも健康的な食事を心掛けたい
そうした職場での昼食になんとなく居心地の悪さを感じていたが、ある出来事が状況を一変させる。コロナ禍だ。
新型コロナウイルスの流行は、私の職場にも様々な変化をもたらした。その中でも私にとって大きな変化だったのは、昼食の摂り方だ。
これまでのように同じ卓上で食べることはなくなり、空いている机を使ったり別々の方向を向いて食べるようになった。また、マスクを外している状態での会話は禁止となったため、自ずと食事中の会話は消滅した。
一見つまらない食事風景であるが、私からすればどんなに気が楽になったことだろう。もう職場での昼食の度に会話に上手く混ざれない自分を憎む必要はない。人との距離が取れたことで必要以上に食べるものに気を使う必要もなくなったのだ。
プレッシャーが減り余計な気疲れをしなくなったからか、以前に比べ私の仕事のパフォーマンスも向上したように感じている。
食べる物を却下し続けた頃は自然と食欲も失せていた。仕事の日のお昼は特に食べたい物がなかったのだ。そうして痩せた結果、食べた物が自分の血となり肉となることを身をもって感じた。痩せたといっても標準体重以内のため体調を崩すことは全くないが、気持ちの面では変化があった。私は思い出したのだ。食べることは生きること。食べることは自分自身をつくることだということを。
他の人に合わせるのではなく、自分の食べたい物は自分で選んで良いのだ。食事とは本来生きる上での楽しみのひとつであるため、食欲を以てこそのものだと考える。
決して新型コロナウイルスの流行を喜ばしく思っている訳ではないが、目まぐるしく様々な変化を経験した中で、自分らしくあることの大切さを改めて実感している。
何を、誰と、どんな環境で食べたいのか。自分の心の声にもっと耳を傾けて良いのではないか。
身体だけでなく気持ちの面でも健康的な食事を摂るよう心掛けていきたい。