5,6歳の私に「たからものはなに?」と聞いたら、たぶん「くまさんのぬいぐるみ!」と即答していたと思う。当時、どこに行くときも一緒、寝るときもずっと一緒だったあのぬいぐるみ。今ではもうどこにいるのかわからないけど。
「いまの私のたからものはなに?」
そう自分に聞いてみると、「本棚に入りきらないくらいの本かな。いや、思い切って買った少し高めのピアスも大切だし。あ、自分の誕生日に買った指輪もある!」と、いろいろ出てきた。
一番を選ぶなら、セレクトショップで買った花柄のワンピースかなぁ
冒頭にもあげたように、私にはたからものがたくさんある。
でも、もし「たくさん持っているたからものの中から、一番を選ぶなら?」と聞かれたら、うーんと迷ってから「セレクトショップで買った、花柄のワンピースかなぁ」と答えるだろう。
前の会社を辞め、つかの間の無職期間に出会ったワンピース。試着してみるとそれはもう、めちゃくちゃ可愛くって。黒をベースに紫や黄色、オレンジの花がちりばめられていて、大人っぽさの中にちゃんと“女の子”がいる感じがたまらない。
にやついた顔を抑えながら試着室を出ると、お店の人の顔がぱっと明るくなって「素敵ですね」って言ってもらえたことも覚えている。営業スマイルじゃない、あの自然に出てきた表情と言葉。それがまた嬉しかった。
やっぱり欲しいなぁと思って、値札をさりげなく確認すると約5万円。
……高い。いや、そりゃここはセレクトショップだもん。そこらへんのファストファッションブランドとは違う。それにデザイナーさんが描き起こした花柄や服のデザイン、シルエットだ。それくらいの価値はある。歳を重ねても長く着れそうなデザインもいい。
ただ、ただ、5万円。
私にとって安くはない値段。でも欲しい。なにか買う“理由”がほしい。
結局、その日は買わずに「次来たときにまだ残っていたら、それは運命ということにします!」と言ってお店を出た。
1週間経っても、あのワンピースが忘れられなくて、私はまたお店に行くことにした。
ドキドキしながらドアを開けると「あ、こんにちは。まだワンピースありますよ」とお店の人は教えてくれた。
そっか、まだ残ってたんだ。きっと私を待っていた、ということにしちゃおう。
退職金も出るし、“退職祝い”ということで。
やっぱりこのワンピースは“運命”だったんだ
そのワンピースを着てお出かけする日はいつもよりメイクが楽しかったし、ピアスはどれにしようと悩む時間もわくわくした。鏡に映る姿を見るたびに「やっぱりかわいいなぁ」と気分が高まったし、いつもは絶対にしない自撮りなんかもした。
しかも、その日に会った知人にも「コートの裾から見える、その花柄がすでにかわいい」と褒めてもらった。その言葉がもう嬉しすぎて、「そうなんです! このワンピース、可愛いんですよ!」とコートを脱いで、ひとりファッションショーを始めたりもした。
こんなに着る人を1日中、嬉しい気持ちにさせる服なんてなかなかないと思う。着るたびにこれだけハッピーになれるのなら、絶対“モト”は取れている。やっぱりこれは“運命”だったんだと思う。
私の気持ちをあげてくれるものは、全部たからもの
これが私のいまの一番のたからもの。
でも、ワンピースに合う、口紅やピアスだって私のたからもの。きっとこれからも増えていくんだと思う。たからものでいっぱいの部屋をつくれたら、毎日がもっとハッピーになれる気がするし。5年後、10年後の私に「たからものは何?」と聞くと、何て答えるんだろう。
いまみたいに数え切れないくらいのものを挙げてほしいし、いまの私が憧れていつかほしいと思っているアレやコレを持っていてほしいと思う。