私が初めて『プラスサイズモデル』という仕事を知ったのは、大学生の頃だ。
私はファッション誌を買うタイプではなく、小説や漫画ばかり読んでいた。それでも暇な大学時代、日本のファッション誌を立ち読みしてもよくわからなかった私は、海外アーティストが載っていたゴシップ誌をみつけ、定期購読するようになった。
そこで初めて、世間ではプラスサイズモデルという職業があること、今は多様性の時代になりつつあることを知った。
海外のモデルを見て思う「細いだけがいい」時代は終わったのに…
とくに驚きだったのは、世界的下着メーカーのファッションショーに起用されるモデルの体型だ。日本のファッション誌で見るモデルさんは、すらっと細い腕や脚に薄い体で、一言でいうと華奢。
それに比べ、腕や脚は長いが適度に筋肉質で、腹筋が割れている女性が、下着でランウェイを歩いている。そのモデルに採用されるのは、モデルたちのなかでも夢で、どんなに有名であっても、体型やその人の生き方、他者への影響が適さないとされると、採用されないらしい。
条件の一つに「腹筋が割れていること」とあるようだった。そのモデルたちのライフワークをは、ジムに行ったりヨガをするのはもちろん、野菜だけではなくたんぱく質を摂って、食べながら鍛えることが必須であると記載されていた。
「細いだけが良い時代はもう終わったんだな」と感じた。
「太っていること」は、なぜこんなに叩かれなきゃならないんだろう?
だけれど「モデルたちが実際にやっているダイエット!」という特集があることに、少し矛盾を感じた。
内容としては、運動方法の紹介だったのだが、毎年夏になると同じような特集があるため、年々私は飽き飽きしていた。「痩せてようが太っていようが、良いじゃない!」という見出しの次の号は「そんな体型でビキニ着れる!?」という内容。どう捉えたら良いのか、わからなくなっていた。
就職して、ゆっくり雑誌を読む暇もなくなり、その雑誌を購入することがなくなったころ、廃刊になってしまった。そのうちに日本でも「多様性」といわれるようになり、見た目について発言して炎上する有名人が増えた。日本でも太っていることに対して、寛大な時代がくるんだなと思った。
しかし、どの雑誌もテレビも、健康=ダイエットなのは変わらない。「この人、こんなに太ってるんですよ!」「デブだからこんなに食べるんですよ!」とか…。
太っていることは、なぜこんなに叩かれなきゃならないんだろうか。痩せていても病気のリスクはある。むしろ、体重と身長から算出される肥満度を表す体格指数BMIは、22を適正体重(標準体重)とし、統計的に最も病気になりにくい体格指数とされている。
「自分らしく生きられるなら健康」という考えが広がればいいのに…
BMIが22の頃の自分の体型は、どちらかというとポッチャリだった。でも、体力はあったし、フットワークは軽かった。今は、BMIが14とか15で、骨みたいな体だけど、眠りは浅いし、体力もない。
健康っていっても、血液データに問題がないだけで、きっとそのうちボロがくる。WHOの健康の基準は「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」とされている。太っていても、痩せていても、心が健康であれば良いと思うのだ。
だから私は変えたい。太っていても、痩せていても良いというなら。わざわざ、メディアでダイエット特集をしないでほしい。
食べただけで痩せる食事はないし、それをするだけで痩せる動きもない。正しい食生活をして、適度に動けば、病気を持っていても、その人らしく生きられるのであれば、それは健康であるという考えに世間がなれば良いのにと思う。