特集:容姿のはなし

アトピーの私が言いたい。どんな肌でも美しい

容姿のはなし

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私は生まれたときから、アトピー性皮膚炎だ。
どんなに努力してもなめらかな肌にはならない。病院に通っても、食事に気をつけても、睡眠をたっぷりとっても、痒くてたまらない湿疹が肌の奥から無限に湧いてくる。高校時代は湿疹が膿んでじゅくじゅくになり、全身に包帯を巻いて過ごしていた。半袖すら着ることができなかった。

27歳の今は、半袖も着るし一見アトピーだとわからないほど肌の状態は落ち着いている。でも、服を脱げば背中や尻に湿疹があるし、膝の裏は色素沈着で黒ずんでいる。
女の裸には価値があるとされているが、私の裸には価値がないのだろう。

"どんな肌でも美しい"と言ってくれる人はいないのか

スタイルや顔立ち、些細な肌荒れなど、私からすればずいぶん高い次元でみんな悩んでいる。私は、それら全ての土台となる全身の皮膚がだめなのに。
最近、"どんな体型でも美しい"というメッセージが世界中で発信されている。
本当に素晴らしいし、心からそう思うが、"どんな肌でも美しい"と言ってくれる人はいないのか、とつい思ってしまう。

高校時代、私はずっと泣いていた。私を愛してくれる人は人生に現れないだろうと、絶望して泣いていた。私に触りたいと思う人はいないだろう、自分は無価値だと、強く思っていた。

それから時は流れ、肌が落ち着いてからできた恋人にコンプレックスを打ち明けると、"君の肌だったら、どんな肌でもきれいなんだよ"と言ってくれた。その言葉に救われると同時に、一番肌の状態が悪い時に出会っていたら、この人は私のことを好きになってくれただろうか、とも思った。

全身の皮膚がなめらかでない女性は、女性ではない何かなのだ

映画、ドラマ、テレビ番組、雑誌に出てくる女性達は、皆なめらかで傷ひとつない肌をしている。絵画に描かれた女性達もそうだ。小説を読んでも、太宰治の『皮膚と心』(ある日突然、全身に湿疹ができた女性の葛藤を描いた短編)綿矢りさの『勝手にふるえてろ』(主人公のOLが軽度のアトピーという描写有り)を除いて、誰も皮膚に言及しない。私の読書量が少ないだけかもしれないが。

私は、この社会で、皮膚に問題を抱えた女性はいないものとされている、とずっと感じていた。全身の皮膚がなめらかでない女性は、女性ではない何かなのだと。
私は皮膚の悩みから、生まれてきたくなかった、とずいぶん長いこと本気で考えていた。今の私には夫がいるが、子どもがアトピーだったらと考えると、子どもを産むのがこわい。皮膚によってもたらされる苦しみを知っている分、子どもに私の体質が遺伝する可能性が高いのに、産む決断をしていいものか迷う。

夫は私の背中に薬を塗ってくれる。優しい夫に感謝するとともに、汚い背中を見せて萎えないだろうか、と思う。セックスレスにならないだろうか、と。私は自分の力ではどうにもならないことで怯えている。

誰も言わないのなら、私が言おうと思う。どんな肌でも美しい。

昨年、小さな岩盤浴のお店に行ったとき、背中から首にかけて真っ赤な湿疹が広がっているアトピーの女性が隣に寝ていた。同い年くらいの人だった。私はその人を心底気の毒に思い、自分は肌が落ち着いたから恋愛できたものの、彼女は恋愛できるのだろうか、と考えた。

そのとき、私はすごく自分に対して嫌な気持ちになった。
生まれ持った肌で、そのときの状態で、愛してくれない相手など、願い下げではないか。苦しみを一緒に担ってくれてこそ、パートナーなのに。

先ほど私は、"どんな肌でも美しい"と言ってくれる人はいないのか、と書いた。
誰も言わないのなら、私が言おうと思う。
どんな肌でも美しい。

たとえ湿疹が化膿して包帯を巻かざるをえない肌でも、乾燥して皮がポロポロ剥がれ落ちる肌でも。
美しさの問題ではない、健康不健康の問題なんだ、と人は言うかもしれない。
アトピーは一生付き合っていくものだ。私は一生不健康だと言われ、無視され続けるのだろうか?
そんなことはない、と言いたい。健康でも不健康でも、一生懸命生きている私たちは美しい。

そろそろ、吹き出物ひとつないなめらかな肌が正義だ、そうでなければ女性ではない、という物差しをやめてもらいたい。必死で生きている私たちを、いないものとして扱わないでほしい。肌がなめらかではない私たちも、生きて、存在している。そして、美しいのだから。

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