テレビを持たない生活を始めて3年。
近年は私と同じくテレビを持たない若者が増えているらしい。
一昔前「テレビを持っていない」と言えば
「テレビがないなんて!お家で一体何をしているの?暇じゃない?」
「テレビを買うお金がないの?」
「お家が厳しいの?」
「ずっと本を読んでいるの?」
と驚かれそうだ。
実際、これらは小学生の頃、テレビがない友人に当てられた言葉でもある。
私も正直、テレビのない生活をする友人が不思議だった。
なんせテレビがなければ世の中のことが何もわからない、話題についていけないと思っていたから。
テレビから一方的で偏りのある価値観を植え付けられていたのかも
ところが今では
「うちもないよ~」
「うちはテレビあるけど全然見てない」
「なくても生きていけるもんね~」
となんてことなく肯定される。
そりゃそうだ。
時代が進み、テレビ以外の選択肢が山ほどあるのだから。
YouTube・TVer・Netflix……無数のチャンネルから取捨選択し、好きなものをピンポイントで視聴できる。
そこが魅力だ。
SNSも発達したからテレビがなくても時間潰しは永遠にできる。
テレビのある生活をしていた頃は気付かなかったけれど、
離れてみるとテレビから一方的で偏りのある価値観を植え付けられていたのかもと気付いた。
テレビを見せないで育てたいという友人のご両親の気持ちも今は痛いほどわかる。
私はテレビとさよならしてどんどん正常に、クリアになった気がする。
喉に魚の骨が突っかかるような違和感を無視できなかった
しかし、テレビが常についている祖母宅へお泊りに行くと毎回テレビの汚染に直面する。
中でも先日、お昼のバラエティー番組を視聴した際、ショッキングな出来事があった。
(会話を一語一句覚えているわけではない点をご理解いただきたい)
その日、ゲストには大手事務所からデビューした女性向けアイドルの20代のメンバー2人ととある俳優さん(女性)が迎えられていた。
その俳優さんは高校生になったばかりで、凄まじい演技力はもちろん知的な人物として知られている。
MCがゲストのアイドルに
「女子力がある子ってどんな子だと思う?」
と質問を投げかけた。
すると1人は
「食事のときにサラダを取り分けてくれる子。気が利くと、おっ!と思う」
と、もう1人は
「ハンカチを常に持ち歩いている子」
と答えていた。
続いてMCはゲストの俳優さんに
「〇〇ちゃんは2人のお話を聞いてどう思った?」
と会話を振る。
「……頑張ります!」
番組は和やかに滞りなく進行してゆく。
しかし私は喉に魚の骨が突っかかるような違和感を無視できなかった。
-ああ、これが現実なんだ-
世の中の"普通"は依然、私の向こう岸にあった
私はお花畑にいたのだ。
類は友を呼ぶ現象で、だんだんと考え方が違う人とは疎遠になり、
学生の私は"仕事だから"という理由で合わない人と付き合う必要もなかった。
テレビなしの生活で情報を選べる立場になり、おかしいと感じるコンテンツを無意識に遠ざけていた。
人はそれぞれにお花畑を形成する。
右派は右派のお花畑を、
フェミニスト嫌いはフェミニスト嫌いのお花畑をつくるように、私は私のお花畑をつくったのだ。
「デブは女を捨てている」
「女はクリスマスケーキだよ」
「男は3高じゃなきゃね」
こういった言葉を真実だと疑わず誰彼構わず傷つける人たちと戦っている人、
優しい世界を持った人が私の視界の大部分を収めるお花畑。
不快にならない人たちと情報に囲まれて、その私にとって居心地のよい世界はまだまだ主流ではないけれどかなり広まってきていると勘違いしていた。
世の中の"普通"は依然、私の向こう岸にあったわけだ。
その後も骨はぶすぶす刺さった。
美容にハマっている男性アイドルに"女子力"という言葉をやたらめったら使ったり、
「お前、どうしちゃったんだよ!」
(訳:お前は男なのに、女がするべき美容にハマるなんてどうしちゃったんだよ)
と周りが突っ込み、笑いが起きたり。
テレビはこんなことの連続だ。
観ていてひやひやする。
和気あいあいとした画面から不意に矢が飛んできて
気持ちが悪い、悲しい、怒りたい。
このままテレビを見続ければこの感情さえ麻痺してなくなるのだろう。
それがまだ高校生で将来有望な俳優さんをはじめ、子どもたちにも行われている。
おばあちゃんはテレビが真実だと思っている。
おばあちゃんからテレビを奪えば抜け殻になってしまいそうだ。
私よりトレンドのファッションやグルメに詳しいのはかわいいけれど、
政治や女性軽視もおばあちゃんに刷り込まれ内在化しているのは見るに耐えない。
だから私はテレビを中心にした家族団欒に耐えられず、ひとりそそくさと2階のベッドに逃げ込んでしまう。
私がテレビを買いたくなるようなテレビを期待してる
だけどテレビにできることはまだまだあるはずだ。
ネットの海で自分にとって都合のいいものだけを選んでいたら価値観は時として曲がってしまう。
だからこそ大勢の人の目に触れるテレビは伝える内容さえ正せば可能性に満ち溢れている。
それにテレビを観て私は鼓舞された。
確かに、未婚は可哀想だとか外見を詰るお笑いだとか問題は山積みだけれどそれがまかり通っているテレビの世界で
「それはちょっとおかしいんじゃないですか?」と大御所に切り返す芸能人もたまにいて世の中がほんの一歩だけど少しずつ前進するのを感じる。
その勇気に胸を打たれ、私も頑張ろうと励まされる。
テレビって本来こういうものだよね。
最後に、夢物語だけど夢語らなきゃ夢叶わないから言わせてもらうよ。
私がテレビを買いたくなるようなテレビをテレビの皆さん期待してるぜ。
4Kとかそういう話じゃなくてね☆