私は恋人がもう6年いない。今年25歳だから、最後にそういう存在がいたのは19歳の時になる。そんな私だったが、今年6年ぶりに気になる人ができた。
久々の恋をする感覚。なんでもない時にその人のことをぼんやり思い浮かべて、その人から連絡がくるだけでルンルン気分で、ご飯に行くと決まっただけで、何を着ていこうか何日も前から考えて。
そんな感覚の中で、最近ふと思い出す。6年前に付き合っていた元彼のことを。
6年前に別れた元彼との楽しい記憶と、幼すぎた私たちの「恋心」
元彼のことを、引きずっているつもりはなかった。だって、私はこの6年間、心の底から「はやく恋がしたい」「彼氏がほしい」とぼやいていたのだから。でも、きっと6年ぶりに恋をして、ようやく私は本当の意味で元彼を断ち切ることができるのだと思う。
元彼とは、高校が同じだった。高校3年の時に連絡をとるようになって、卒業を機に付き合った。本当は、付き合うまでに紆余曲折あったのだが、今回は割愛しておく。
彼は、私にとって初めての彼氏らしい彼氏だった。手を繋いでデートをするのも、毎晩寝る前に電話をするのも、「少しでも長く一緒にいたいから」とわざわざ各駅停車の電車でたらたら帰ったのも、体を重ねたのも、「愛してる」と誰かに言われたのも…全部彼が初めてだった。
彼との楽しくて、幸せだった記憶がたくさんある。それと同時に、悲しくて苦しかった記憶もたくさんある。私と彼は、たくさん喧嘩をした。私たちは、きっと付き合うまでにお互いのことをよく知りすぎたのだと思う。私も彼も互いに我儘で、子供だった。
彼とは別れ方だって最悪だった。あの日も些細なことで喧嘩をして、お互い収集がつかなくなって、ほぼ勢いで別れてそれっきりだ。あまりにも幼稚な恋だったと思う。彼は、お世辞にもいい人ではなかったし、もし仮に友達が彼みたいな人と付き合っていたら「えー、やめときなよ」って思ってしまうようなタイプで、付き合っていた当時だって好きなところより、不満に思っているところの方がスラスラあげられたんじゃないかと思う。
私は元彼を愛していた。でも、ずっと憎かったのかも…
そして、何より私たちはきっと、あの時別れなかったとしても結局、どこかで別れていたはずだ。頭ではわかっている。それでも、それでも…本当に大好きだった。
本当に大好きだったから、何度も幸せだった頃の夢を見ては、目覚めてから泣いた。携帯の通知が鳴るたびに、彼からじゃないかと期待した。ブロックしたんだから、通知が来るわけもないのに。彼が好きだと言っていた曲を聴いたら、街中でも耳を塞ぎたくなった。彼の最寄りの駅を通り過ぎる時は、電車の中から無意識に姿を探した。
本当に大好きで彼のことを本質から理解していたから、相手が何で怒って何で傷つくかわかってて、わざと傷つく言葉を喧嘩した時には選んだ。
「好きの反対は嫌いじゃない。愛してるからこそ憎いのよ」と、学生時代とある教授が言っていた。当時は、なんて過激な言葉なんだろうと思っていたけれど、今その言葉の意味が理解できる気がする。
私は、彼を愛していた。そして、ずっと憎かったんだと思う。蜂蜜みたいに甘ったるくて、これ以上ないくらいの幸せを私に与えた後に、あっさり目の前からいなくなってしまった彼のことを。
きれい事は言わない。大嫌い。そして、本当にさようなら
だって「幸せで楽しい時間をありがとう」だなんてきれい事、私は彼に思えたことがなかった。別れた恋人に向けて「幸せになってね」と言うのをよく聞くけれど、私は彼に幸せになんてなってほしくない。私は、彼にいつまでも後悔してほしい。私のいない世界で、時折私のことを思い出しては苦しくなってほしい。私は、彼の中のキラキラしたきれいな思い出になんてなりたくない。いつまでも消えない、痛々しい傷跡になりたい。
この感情が、元彼に対してずっと抱いていた感情だったのだと、新しく恋をしてようやく自覚した。
ねえ、お金遣いが荒くて、口が悪くて、気まぐれだった君へ。
大好きだった。そして今も、大嫌い。今度こそ、本当にさようなら。