朝のルーティーンの中で一番はじめにすることは、スマホで情報をチェックすることだ。無料通信アプリに届くように設定しているニュースの中から、気になる記事に目を通す。次にSNSをチェック。新しい情報が自動で更新されるホーム画面だけでなく、その日にトレンド入りしているワードもざっと確認し、おすすめとして表示されているアカウントも覗いてみる。そして最後に、お気に入りのキュレーションサイトの更新情報も確認しておく。

スマホの画面からは、質の低い限られたテーマの情報が大量に流れ込む

数年前まで、朝の30分はテレビの情報番組を観て過ごしていた。それが今では、ベッドの上でスマホの画面に指を滑らせる時間になった。

情報源がテレビからスマホに代わり、得る情報の幅・質・量に変化があった。

まず、情報の幅が狭まった。スマホで情報をチェックする場合、基本的に興味のないテーマの記事には目を通さない。さらに、キュレーションサイトでは個人の興味に沿った情報のみが自動で表示されるため、そもそも似通った情報しか目に入ってこない。

次に、情報の質。これは間違いなく低下した。SNSでは個人が自由に情報発信をしており、それが正しいという保証はない。ファクトチェックをすることは稀で、とりあえずは情報の1つとして受け取っている。さらに、キュレーションサイトに集められた情報も必ずしも正確であるとは限らない。インターネット上には、同じテーマでも違うことが書かれている記事がいくつも存在している。

情報の量は、格段に増えた。朝の情報番組を数十分視聴して得られる情報量はあまり多くない。コメンテーターが意見する時間が長かったり、特集などのコーナーが入ってくると尚更だ。一方、スマホでは必要ないと判断した情報には目を通さないし、流し読みで事足りる場合も多いので、短時間で多くの情報に触れることができる。

以上をまとめると、スマホでは「幅の狭い、質の低い情報を大量に得ている」ということになる。

本当に正確で必要な情報を得ることは、簡単なようで難しい

ここまでで気づいたことは、私は十分に情報収集ができていないということだ。考えてみると、朝の30分で得た大量の情報の中で、その日の夜まで覚えている情報はせいぜい2、3個。さらに言うと、他人に伝えられるほど正確に把握できている情報は1個あるかないかだろう。これでは、情報を収集しているとは言えない。

メディア戦国時代とも言われる現代。スマホを開けば、沢山の情報であふれている。その中からどれが重要で、どれが正しいのかを自分で判断しなければならない。刺激的で興味をそそるタイトルの記事にばかり目を向けるのではなく、自分が知るべき情報を確実に選択する。これは決して簡単なことではないと思う。情報を受け取る側として身に着けるべきスキルと言われればそれまでだが、皆が当然のこととしてできているかというとそうではないと思う。

情報があふれかえる世の中で、価値あるものが埋もれないように

そんな今だからこそ、私がメディアに期待したいことは、従来のマスメディアが果たしてきた社会的役割を貫くことだ。つまり、世の人々が知るべき情報を分かりやすく、確実に伝えることだ。Webメディアの中には、クリック数を確保するための戦略なのか、タイトルと記事の中身が一致しない記事も見受けられる。記事を読んでもらうために工夫しなければならないのは理解できるが、全ての記事に目を通す時間のない読者にとっては、タイトルだけで記事の中身が分かることが望ましい。タイトルをみて自分に必要な情報だと判断し、記事を開いてみると全く関係のない記事だったということも往々にしてある。

個人で情報を選択しなければならない時代だからこそ、メディアはどの情報が重要なのかを明確にし、それを分かりやすく伝えることを徹底してほしい。溢れる情報の中に、価値ある情報が埋もれてしまわないように伝えてほしいのだ。

現在のような質の低い情報が溢れかえる時代は、そう長くは続かないと私は思う。多すぎる情報に疲労した人々は、自分である程度情報を制限し始めるのではないだろうか。そうなった時に選ばれるのは、読者に真摯に向き合い、伝えるべき情報を分かりやすく発信し続けているメディアだと思う。業界が大きく変化する中でも、メディア本来の役割を見失わないでいてほしい。