もし誰かに「あなたの容姿の中で一番好きなパーツはどこ?」と聞かれたら、私は迷わず「足」と答えるだろう。顔もさして美人ではなく、胸もさして大きくはなく、身長もさして高くない私だが、足にだけは自信がある。身長に占める足の割合が多く、長くてすらっとしている。高校時代にはその足の長さを活かして陸上部に所属していた。アラサーの今でも夏はショートパンツに生足というスタイルは定番だし、冬はホットパンツにタイツを履くのも大好きだ。スキニーパンツにヒールなんて日にはモデルになった気分で街を歩いている。とにもかくにも私のチャームポイントは足なのである。

高校時代には感じなかった足への視線が気持ち悪くて叫びたくなる

高校生の頃までは、田舎の公立の進学校で運動部だったこともあり、見た目に気を使わない「陰キャ」を極めていた。土日は大量の宿題に追われ、クリスマスや誕生日は部活の女の子の友達と女子会をしていた。男っ気なんて全くなくて、彼氏どころか男の子の友達なんて1人もいなかった。陸上部で水着みたいなユニフォームを着て走っていたこんな陰キャに、女性としての魅力なんてあるわけないと思っていた。

大学生になり私服で通学するようになって、上記で書いたような自分の好きな恰好をするようになった。そんな服装をしていると、街で受ける男性からの視線ももちろん足に集中する。若い方からお年寄りまで私の足に視線が集まっているのだ。私はそれを「気持ち悪い」と感じてしまう。「目で痴漢されている」という言葉が一番適切で、「私は自分が一番好きな恰好をしているだけで、あんたらの性的対象のためにこの格好をしているわけではないんだよ!!」と叫びたくなる。下から上にかけてジロってみるあの目つきが、男性から雄になるあの目つきが気持ち悪いのである。電車に乗る時は女性専用車両に乗るようにしている。

不快なのに自分の魅力を再確認し、少しだけ嬉しさが混じる複雑な感情

何回も言う。目つきが、気持ち悪い。ただ、困ったことにその気持ち悪いという感情の中に、1mmだけ「嬉しい」という感情が混ざっているのも事実なのだ。もともと可愛くてモテモテな人生を歩んできた人には分からないかもしれないが、高校生の頃の陰キャな私とはおさらばして、「私、女として魅力的なんだ」ということを再確認できる。本当に、ちっぽけな再確認だ。そんなことしなくても、自分に揺るぎない絶対的な自信を持っていればすべて済むことなのに。客観的評価ではなく、主観的な評価を大事にすればいいのに。「他人からどう思われるか」ではなく、「自分がどう思うか」を大切にすればいいのに。しょうもないったらありゃしない。でも、少し嬉しいのである。

街で私の足に向けられる視線を、私はどう受け止めればいいのか分からない。気持ち悪くて、少し嬉しい。いつか他人を気にせず自分に女としての絶対的な評価がもてるまで、この視線にもやもやした複雑な感情を抱くしかないのだろうな。