旦那と結婚して一緒に暮らし始めてから、早6年。この期間の中で、旦那の影響で私が初めて見ることになったテレビ番組はたくさんある。年末の警察密着系の番組とか、年始のマグロ漁番組とか。
旦那とソファで並んでパルムを食べながらそんな番組を見ていると、「もう今年もこんな季節か~」と思ったり、「この人また去年と同じことやってるよ(笑)」と突っ込みたくなったりもする(猫を飼い始めたマグロ漁師山本さんは、息子達の推し)。
また、これらと違って季節感はないものの、私が結婚してから見るようになったテレビ番組のジャンルがある。それは、世界の仰天するような映像を流したり、海外テレビ番組の面白コーナーを放映する系の番組だ。とはいえ、私の場合は見るようになったというより、ながら見なのであるが……
我が家の旦那を含め、そんな番組をお好きな方もたくさんいらっしゃるであろう中、非常に恐縮なのだが……私はそれらをのんびりと楽しめない。なんというか実に個人的な感想なのだけれど、びっくりする様な映像を次々と流されると感覚が麻痺してきて、どうしたって既視感を感じてしまうのだ。大体車は横転するし、犬や猫は宙返りをするイメージ。あと、強盗犯は全員うっかりしている(そんなことはないんだろうけど)。
恐らくこれらの番組は、もはや伝統芸能の粋に達していて「型」がある。ファンはおそらくその安定感を楽しんでいる(私が好きな、劇的な匠の番組だって、人によっては伝統芸能として映っている可能性がある)。
思わず見入った社内調査番組。社長が変装し侵入する設定はなんか新鮮
そんな、私にとっては作業用BGMとなっているこのような番組の中でも、思わず手を止めて見入ってしまった映像がある。それは、「アンダーカバー・ボス」という、社長が変装して社内調査を行う、イギリスのノンフィクションリアリティ番組の一部を切り取ったコーナーだ。
その番組の中では、大企業の社長が正体を隠して新人として現場に潜り込む。慣れない手付きで掃除や後片付けといった作業を行う新人(=社長)。モタモタと動く新人の正体にまるで気付かない現場のリーダーは、上から目線で社長を教育する。
また、社長側もただ使われているだけではなく、現場に入らないと気付くとことのできない、その企業の問題点や部下の功績を見つけ出していく、というものだ。
私が見た番組で「アンダーカバー・ボス」の映像が使われるのは、どうやら鉄板だったらしい。しかし私にはその映像がとても新鮮に感じた。と、同時に、「そういや日本でも、たまにそういう話聞くよな」とも思ったのである。今年、星付きシェフの方がサイゼリヤでバイトをしているという本が出版され、ネット上でも話題になっていた。あ、「この恋あたたためますか」でも社長がコンビニ店員になっていたな……。
現場の状況を知るための調査や視察が、逆に現場のバタつきの原因に
私は現状主婦なので、企業で働いている人の状況を、詳しくは知らない。家族や友人から聞く話と、メディアから流れてくる情報程度だ。偉い人の考えていることなんて、全く知らない。
とはいえ企業で働く人々にとっても、お偉いさんとの距離感は大差ないらしい。現場の要望を上にあげようにもどこから手を着ければ良いのか分からなかったり、重要な決定をまさかのLINEニュースで知ることもあったとか(マジか)。
過去に「事件は会議室で起きてるんじゃない!」と織田裕二が叫んだが、これはもう何年前の台詞だっただろうか。現場の声はいつ会議室に届くのか。会議室の声はどうして後から聞こえてくるのか。
そんな現状を打破し、業務を改善する為の現実的なシステムは、各業種の中で導入、運用されていると思う。外部の企業に委託した「ミステリーショッパー」や「衛生チェック」、または内部の人間や関連する機関が行う「視察」や「検査」などなど。
しかし、自分がアルバイトをしていた頃や友人の話、メディアで聞く情報をかき集めて考えるに、それらの調査は往々にしてルーティーン化されており、疎まれ、嫌がられがちではないですか?本来それらの調査は、嫌われる必要のないシンプルな確認業務、もしくはむしろ喜ばれるべき、業務改善の一手となり得るはずなのに。
……ぶっちゃけ、来る前、来た直後、めっちゃバタつくよね??これなら社長が変装して抜き打ちで来る方がマシかもと思うレベル。これでは調査する側も、可哀想だ。
上からも下からの要望も改善に繋がるように、意義あるサプライズを
では、調査を受ける側の反応を「うわぁ、きた!」から「やったぁ、きた!」にするにはどうすればいいか。私の提案なのだが、「調査しにきた人を逆に調査して差し上げる」システムに変更するというのはどうだろう。「調査すべき場所、そこじゃなくてここですよ~」「このやり方、ぼちぼち見直さないとまずいので調査していってください~」「ここ、正直毎回調査が来る度に急ぎで誤魔化してるんで、工程見直したいんですけど~」みたいな。
もちろん企業の繁栄や健全な維持を目的とした、上からの要望はあるだろう。しかし下からの要望だって、当たり前にあるに決まってるじゃないか。
その辺をゴロゴロしている主婦も、さっき言っていた。びっくりする様な映像を次々と流されると感覚が麻痺してきて、どうしたって既視感を感じてしまうと。
企業に入る調査も、どうせするならば改善に繋げて頂きたい。だから、鉄板のドッキリはもう辞めましょう。これまでの古い「型」は捨てて、新たに互いのプライドをかけたやり取りを交わす。その中で、双方にとって意義のあるサプライズを作り上げられたら最高だと思うのです。
例えばオネェ口調の検査官を検査し返すのは、色んな意味でドキドキするけれど、あのニヒルな微笑みをみるためならば、お互いにぶっちゃけてスーツ歌舞伎を演じる価値は、あるよね……!
最後に、年末に向けて仕事が立て込んでいる皆様、お疲れ様です。そして、調査をする側の皆様も、お疲れ様です。当然、企業の偉い人にも言います、お疲れ様です。
世の中には現状、嫌われつつもしなくてはならない業務改善のための役割がたくさんあるのだろう。しかし、それを当たり前だと思いすぎず、できるだけ根本的な改善に繋がり、かつ、お互いにストレスが過剰に掛からないための試行錯誤が、各現場で行われたらいいなぁと、この師走に私は思うのでした。