#3「結婚の決め手」 つくし編

夫婦連載第3回目の更新です。

今回は「結婚願望の無かった私がどうして妻と結婚したのか」というお話をしていきます。

地元の病院を辞めて北海道から出てきたばかりの私は結婚願望というものが全く無く、むしろ「結婚とかはしばらくいいや…」と考えているような人間でした。

学生時代からヒッチハイクが趣味で、北海道を一周してみたり北海道から大阪まで行ってみたり、見知らぬ土地や人と出会うことが好きだったため、しばらくはいろんな場所を自由に旅して回りたいとさえ思っていました。

「どんな人生を送りたい?」話すなかで意識した「結婚」

そんな自由人な私が、結婚をポジティブなものとして意識するようになったのは、詩織と会うようになってからでした。

関東へ移住して少し経ち、日々の暮らしにも慣れてきた頃、妻とその友人とのご飯会(連載第1回参照)がありました。当時結婚までは現実的に考えられていなかったものの、好きなことを一緒に楽しめるパートナーが居てくれたら嬉しいなと考えていたのも相まって、詩織に好意を抱き始めたのでした。

そして、そこからお付き合いを始めるまでの間に何度かデートを重ね、お互いのことや家族のことを話したり、将来はどういう人生を送りたいかということを話したりしていく内に、詩織が「数年以内には出産・育児をしたい」と考えていることを知ります。
当時、彼女は27歳です。

曲がりなりにも看護学校で人間の体について学んできた身として、妊娠・出産を考えるならなるべく早い方が良いことは分かります。
そこで初めて結婚や子育てについて考えるようになりました。
結婚をした今改めて考えると、ずいぶん遅いタイミングだったなとも思います。

性教育YouTuberのシオリーヌさんと夫のつくしさん
同時期にYouTubeチャンネル登録者10万人達成した時のお祝い

結婚に対する「懸念」。ぶつけて変わっていった価値観

“結婚”というものを考える中で、自分が最も懸念したのは「自由な時間の喪失」でした。22歳の自分は、あちこちに行ったりキャンプをしたり海外へ出てみたり、自分の人生でこれから先楽しもうと思っていた事柄が全て難しくなってしまう気がして悩みました。

ただ、キャンプについては詩織も好きだと分かっていたし、彼女は年1〜2のペースで国外へ出るほど、海外旅行が好きです。

ある時、子供を持ってからの海外は流石に難しいのかなと相談してみると、「今は親子留学とかもあるから、そういうの行ってみるのも楽しそうじゃない?」と提案してくれたのがとても印象的で、正直「何それ、なまら楽しそう…」と思いました。

残る悩みはヒッチハイクです。今まで北海道〜大阪は行ったことがあるものの、それより西側を旅したことは無く、「ヒッチハイクで出来る限り日本を周りたい」というのが以前から私の中で一つの目標になっていました。

「結婚すると、そういう時間を取れなくなってしまうのではないか」と考えていた自分ですが、二人の暮らしのことを一人で悩んでもしょうがないと感じ、思っていたことをストレートに伝えてみることにしました。

すると詩織はあっけらかんとして、「行ってきたら良いじゃん」と言うのです。
彼女の言葉を聞いて、「結婚後は出来る限り家に居なければならないのでは」という漠然とした考えを持っていた私は、衝撃を受けました。(ちなみに本当は今年の春頃に旅の計画をしていたのですが、コロナのせいで中止せざるを得なくなりました。コロナ許さん)

その辺りで自分の結婚に対する価値観はガラリと変わり始め、「好きな人との結婚って実はそんな悪いものでは無いし、自分の希望を相手に伝えて話し合うことが大切なのでは?」と考えるようになっていったのでした。

「そもそも結婚とは?」ふたりで話し合った結論は…

本当に結婚することが決まったのは、MFAJ(Marriage For All Japan)という国に対して同性婚訴訟を起こすカップルを支援する団体のイベントに参加した日のことです。

その日の夜、二人で「そもそも結婚とは?」という話になり、その話をしていく内に「あれ?今結婚しても、一緒に暮らしている環境や日々の生活自体は何も変わらないのでは?それなら結婚しない理由は別に無くない?」という考えが大きくなっていきました。
その気持ちを詩織に伝え、夫婦になることを決めたのでした。

結婚のきっかけを貰ったそのイベントにはとても感謝していますし、“同性である”というだけで結婚できないカップルが多く存在する中、たまたま好きな人が異性であったというだけでスムーズに結婚出来る今の状況の異様さを、改めて考える機会にもなりました。同性婚が整備されるまで、自分たちに出来ることを行いながら引き続き応援していこうと思っています。

ちなみに結婚を決めて最初に連絡したのは、お互いの親ではなく共通の友人たちでした。
今までの詩織の過去を知っている人たちだけあって、泣くほど喜んでくれたのを覚えています。

妻の記事でも書かれていますが、この原稿の締め切り直前までかなり大規模な喧嘩が繰り広げられており、日常会話すらままならないほどだったので、仲直りできて本当に良かったです。(その間、連載テーマの相談どころではなかったので、今必死になって原稿を書いています。編集さんごめんなさい)

結婚が決まってからも「結婚するなら事実婚?法律婚?」「改姓するならどうする?」などなど、たくさん話し合いをしてきたので、次回からはそういった部分についても触れていきます。

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