曖昧な関係に始まり、曖昧な関係に終わった1年だった。
セックスもする友達(いわゆるセフレ)の関係だった彼から「遠距離恋愛中の彼女と別れた」と一報もらったのが2020年1月2日のこと。私との関係をひた隠しにしていたからこそ(私も彼の幸せを壊してやろうなんて1ミリも思っていなかったから、固く口を閉ざしていた)、順調に見えていた彼と彼女の関係はあっけなく終わってしまったらしい。
「1番でなくてもいいから側にいたい」。ずっと強がっていたのだ
天にも昇る気持ちだった。やっと私の番が来たのか、と。
そう、今思えば私は彼のことが大好きで、「1番でなくてもいいから側にいたい」なんて強がりをずっと続けていたのだ。彼女を失った今、彼の愛情はきっと私に向いてくれる。
でも、世の中はそんなに甘くなかった。
彼には他のセフレがいて、「その人が気になっていて、付き合いたい」と相談された。
「今度は本気だから、君との関係も終わらせたい」と。
“私は2番目だから”と思って1番の座を虎視眈々と狙っていたが、実際はもっとずっと下の順位だったのだ。ただの都合のいい女。
それでも嫌われたくない私は、
「そっか。今日で最後だね。さようなら」
としか言えなかった。
本当はもっと罵ってやればよかったのだ。こんなに長い時間一緒にいて、寂しさを溶かし合って、愛させやがって…。
それでも人間は優秀で。自分を好きになれる趣味で、充実していた
程なくして、彼はその女の子と付き合い始めた。
私にはぱったりと連絡をして来なくなった。彼と過ごしていた夜の時間は空白になり、空虚な毎日を過ごしていた。
それでも人間は優秀で、“忘れる”という機能が私にも正常に働き始めたのは夏を過ぎた頃。
仕事が忙しくなったというのも要因の1つだが、料理をしたり、ヨガをしたり、もっと自分のことを好きになれる趣味を見つけられたのだ。
一人で立って、自分のために自分の時間を使えるようになってきて、それなりに充実していた。
彼は戻ってきた。1年前と違うのは、私は私のために生きていること
12月。彼がその女の子と別れたらしい。
おかしいと思ったのだ、彼が私を飲みに誘うなんて。
半年以上(というかほぼ1年)2人で会うことなんてなかったのに。私を捨ててまで付き合った彼女にこっぴどく振られた彼は、痛々しいほど傷ついていた。
“分かるよ、1月の私はあなたと同じだったから”と心の中で呟いた。
彼は私のところにまた戻ってきてしまった。
寂しさを私で埋めようとしているのは分かっている。
でも、1年前と違うのは、私は私のために生きているということであり、彼は私の全てではなくて私の一部なのだ。愛情はもちろん存在するし、きっと彼を一生嫌いになることなんてないと思う。
独り占めしたいなんてそんな大層なものではなく、もっと広い愛の一部を彼に捧げよう。
人は変わっていく。目の前の関係性がどれほど苦しくても、時間をかけることと少しだけ見方を変えることで変えられるのだ。一言で言えば“曖昧な関係”だが、曖昧の捉え方を私はこの1年で大きく変えたのだ。
“2021年、私は誰の都合の良い女にもならないし、私は私の人生を生き続ける”と
2020年彼との最後の夜に誓った。