私が毎日一緒にスキップしたくなるような相手は“過去の自分”だ。
私はつい最近まで“過去の自分”に嫉妬していた。一緒にスキップなんて絶対にしたくないくらい嫉妬をしていた。

“過去の自分”は自由だった。好きな時に好きなところへ行くことができた。仕事の帰りに先輩に誘われたら、当日でも飲みに行くことができた。
週末は夫と電車で街へショッピングへ行き、夜はカウンター席でゆっくりお酒を飲んだりした。
“過去の自分”は見た目も自由だった。肩より下の髪を毎朝巻いて、大好きなメイクを気が済むまでして、ブラウスにスカートにヒール、財布と携帯電話しか入らない小さなバック、自分で選んだ好きなものに身を包んでいた。
お風呂上がりのスキンケアも時間をかけて、月に一回はエステに通った。美意識が特別高い訳でもオシャレな訳でもないが、それなりに自分の機嫌がよくいられるレベルで過ごせていた。

携帯電話のアルバムの中に存在するキラキラした無数の“過去の自分”

“過去の自分”が100%だとしたら、“今の自分”は30%くらいしか満足できていない。初めて知ったのだが、30%しか自分のことを満足できていないと、中身まで燻んできてしまう。とても、ネガティブな嫌味っぽい人間になってしまい、さらに“今の自分”が大っ嫌いになった。そして、“過去の自分”に嫉妬するようになってしまった。

自分を満足させられなくなったきっかけは、出産・育児だ。これはきっかけであって、原因ではない。そう分かっていても、原因と思ってしまう自分に更に嫌悪感を抱いてしまう。自分で決めた人生だし、覚悟を持って進んできたのに。

そんなある日、久しぶりに大学からの親友と長電話をして懐かしくなり、携帯電話のアルバムに入った4万5千枚を超える写真を見返した。

そこには無数の“過去の自分”がたくさんいた。

とてもキラキラしていた。楽しそう。我ながら友達になりたいと思うほど、明るい笑顔だった。シミやシワも今より少ない。でも、いざ写真で見ても不思議と嫉妬心は生まれなかった。

“過去の自分”もそれなりに悩んで経験を積んできたから今の私がいる

“過去の自分”もそれなりに悩んでたことを思い出したからだ。あぁ、この時は仕事の事で先輩に励ましてもらったなぁ。あぁ、この時はうまくいかないことが多くて気分転換に髪を切って失敗したなぁ。

ただ、自由に楽しく暮らしてただけだと思っていた“過去の自分”もそれなりにいろいろ悩んでいたんだな思うと少し愛おしく思えてきた。

二度と“過去の自分”にはなれない。あの頃はなかったシミだってシワだって薄くすることはできても、消えることはないだろう。でも、今なら消えなくてもいいと思う。
そのシミやシワには“過去の自分”にはなかった経験が沢山詰まっている。

“今の自分”だって結構イケてる。過去の自分は成長前の可愛い自分

“今の自分”はボロボロだけど、人を1人楽しませながら一日中危険から守っている。そんな事、“過去の自分”には絶対出来なかっただろう。お酒に頼らないストレス発散の方法だって知っている。お小遣いの中でドラッグストアで購入できる良いコスメも沢山知っている。街にでなくても、家の近くの公園の楽しみ方も知っている。

なんだ、“今の自分”だって結構イケてるじゃん。“過去の自分”は比べる対象じゃなくて、成長前の可愛い自分。そう思うようになったら、気持ちがすーっと晴れてきた。

“未来の自分”が今の私を“過去の自分”としてみるようになった時、愛しんで毎日スキップしたいと思ってもらえるように、前向きに楽しく生きようと思った。