一緒に働く上司は他者も自分も大切にできない、いわゆるパワハラをしてしまう人だった。
この会社が始まって1年。気づけば一緒に入ったオープニングのメンバーは私を除いて誰一人残っていない。
周囲を傷つけながら、自分もそれ以上に傷ついていたんだと思う
「あの人にはついていけない」とみんな同じように口を揃えて辞めていった。その度に、遠くないうちに私も辞めるんだろうなとなんとなく感じていた。
上司は自分の「こうすべき」という考えが降り積もって爆発すると、相手が傷つくような言葉をかける。会議の度に同僚と意見が違うと「あなたは何も知らないし、私が正しい」と言い、その後、同僚を個室に連れて過去のミスを引きずり出してはよく追い詰めた。最後にはなぜわかってくれないのと物にやつあたりをしながら泣いていた。
自分の考えを少しでも譲れないがゆえに、周囲を傷つけながら自分もそれ以上に傷ついていたんだと思う。
私への態度や仕事を任せないことで反感を買い、上司は孤立していった
そんな上司でも好きなところがあった。世話好きで気遣いが細やかなところ、みんなが疲れているなと思ったら、仕事の出先で時々お菓子や甘いものを差し入れしてくれるところ、仕事に熱心で誰よりも頑張っているところ。
だからこそ嫌だなと思う時はありながら私はこの1年間続けてこられたのかもしれない。
ある時、会議で上司と意見がすれ違った。みかねた同僚がお互いの意見を取り入れた案を提案して決まったが、その会議の後、上司から個室に呼び出された。怯えや恐怖もなく、淡々と「あぁ、とうとう私の番がまわってきたか」と思った。
そこから私にだけ妙に業務の伝達がまわってこない、上司から責められる場面が増えた。
日が経つにつれてそれはエスカレートしていき、「あなたは使えないし、何もできないから言われたことだけをしていればいい」と会議や話し合いの場に参加させてもらえないこともあった。
同時に上司は周囲に仕事を任せることが減り、全てといっては過言でないほどの業務量を抱えるようになった。
次第に仕事が回らなくなり、私への態度や仕事を任せないことで周囲から反感を買った上司は孤立していった。
もうこれ以上、みんな傷ついて欲しくない。限界だった
このままではいけない。早く止めなければ、取り返しがつかなくなる。
上司からの仕打ちでストレス性の胃潰瘍になったり、何度も辞めてやると思ったがそれ以上に上司がいつもボロボロに傷ついて、苦しそうに見えて仕方がなかった。
上司はいつも否定されることが怖くて、不安定で、うまく自分の気持ちを表現できない不器用な人だった。
もっと良いパートーナーになりたかったと今でも思う。
もうこれ以上、私も、上司も同僚もみんな傷ついて欲しくない、限界だった。
そして、私は上層部に現状を報告した。
年明けに本社の人が来て、大きく体制を変える話をするという。その間、上司と私は休職を命じられた。
これで本当によかったのかはわからない。もっと他にいい方法があったんじゃないかと未だに迷い続けている。
ただ、もう一度、会社が始まったあの頃みたいに上司と一から話すことは決めている。