私は季節の匂いで時々泣きそうになります。
冬の匂いはツーンとしていて綺麗で澄み切っていて、少し寂しい気持ちにもなります。春の匂いは生暖かく植物と土が入り混じったような匂い。夏はこもった生温い塩素の匂い、秋は香ばしい匂い。本当は文字には表せないような匂いの違いですが、たしかにその一瞬一瞬の鼻に残るものは季節によって変わります。

毎朝必死に練習をこなした部活動。あの時の外の匂いを鮮明に覚えている

泣きそうになるというのはきっと匂いで記憶している出来事や想いが蘇ってくるからだと思いますが、私はそれが嫌いじゃないんです。
こういうことがあったなぁ、と空気を吸いながら想像しながら歩くのが好きです。
旅・お別れ・決断…その時感情が動いた分だけ、今になって鮮明に良い記憶となって思い出されます。

私が高校生の頃、バスケットボール部のキャプテンをつとめることになりました。もともと組織を引っ張っていくような性格ではなかったものの、それまでは自分の技術向上だけのために目を向けていたため、ただ楽しい活動ができていました。

しかし、上を目指せば目指すほどチームでのミーティングが多くなり目標設定も高くなり、自分がチームメイトを引っ張っていく責任感も大きくなりました。時には同期を怒らなくてはいけない時もあり、それが自分では苦痛でした。辞めたいと思ったこともあります。

朝練習は5時起きで寒い中自転車をこいで向かい、シューティングから練習まで必死にこなしました。その時の外の匂いは今でも鮮明に覚えています。部活動は最後までやり切り、辛い思いもしましたが達成感もありました。何よりも乗り越えたことで得たものは大きかったと思います。

季節の匂いを感じる時、自分で決断した良い思い出が懐かしく、誇らしい

自分の進路を決める時、人生を決める時、私は自分の決意で後悔しません。
その瞬間に迷いがなかったかと言ったら、それは嘘になりますが。迷いしかない時もありました。自分が決断した方が正解かなんてわかりません。でも後悔しないのは、どの道を選んでも楽しむ自信があるからなんだと思います。
部活動を辞める選択肢もありました。その時は、「その選択肢がラクだから」という理由しかなかったのでやめました。しかしもしその選択をしていたとしても人生を楽しむ努力はできます。結果、辞めずにやり遂げたという選択の人生しか自分には見えていません。どちらがより良かったかはわかりません。しかし私は自分が出した決断によって良い経験をできましたし、とても良かったと思っています。

そしてそれは季節の匂いもそうで、思い返したときにどんなことも良い思い出となっているからこそ、その時の記憶が懐かしく、そんな一生懸命だった自分に対して嬉しくもあり誇らしくもある感情になるのです。

涙というのは喜怒哀楽の感情の振れ幅が振り切れて溢れるものだと思います。
季節の匂いを感じ、様々なことを思い出し泣きそうになるということは、振り切れるほどの感情の動きがあったということです。
それに気付いた時、これからも感情を揺れ動く時をしっかり記憶していきたいなと感じると同時に、匂いで記憶が辿れるのは自分の感性なんじゃないかと思いました。