新入社員として入社した時には、まさか自分がセクハラに遭うとは思っていなかった。元々気が強い性格というのもあり、セクハラなんて受けたらすぐに拒否できるし、セクハラをした人に対して周りも真っ当な処分を下すだろうと思っていた。
しかし、ドラマの主人公のように華麗に倍返しする事は、現実には難しい。
相手が上司というハードルの高さや、セクハラという明確な基準がないハラスメントに立ち向かうには相当な体力が必要だった。
私が受けたセクハラは、直接触られたりしたわけではない。直属の上司から不倫相手との話を赤裸々に聞かされたり、コロナでテレワークが続いた時、私用のLINEで「会いたい」「可愛いね」などと言われたりした事だ。
直接触られたりした訳でもないのに、自分の不快感だけでこれをセクハラと呼んでいいのかまず迷った。その上司は、周りからは女好きなキャラで知られており、冗談をよく言う上に話がめちゃくちゃに上手いが、裏表が非常に激しい人だった。
そんな事もあって仕返しを恐れた私は、「やめてください」と本人に強く伝える事ができなかった。
打ち砕かれた私の心と、反省ゼロの上司の姿
職場は40~50代の男性がほとんどを占め、私が周りに相談した所で「まぁあの人だから仕方がないよ、冗談で言ってるんじゃない?」などと言われて終わるような環境である。彼氏にも相談してみると、気にしすぎ、と一刀両断された。
唯一の救いは両親だった。涙ながらに相談してきた娘に対して、心配し、知り合いの弁護士まで紹介してくれた。少しだけ自分は間違っていないと思えた矢先、その弁護士の言葉に打ち砕かれた。
「LINEの内容的にはセクハラで訴えられるけれど、あなたもそのLINEに対して返答しているでしょ?」とあしらわれたのだ。
意味がわからなかった。セクハラに対して、毎回全力で拒否していないと訴えられないというのだろうか。
直属の上司からのLINEを全て無視するなんて、新入社員にできると思うのか。
結局その上司を訴えることは諦めたが、部署を違うところに変えてもらい、自分なりに決別したつもりでいた。
その後その上司は別の人からセクハラで訴えられたと聞いた。驚く事に、その上司は訴えられた事を直接、私にLINEで報告してきたのだ。セクハラの言い訳は、ただ2人で飲みに行っただけなのに、口説かれたと相手が勘違いした、という事らしい。
さらに処分は部署異動だけ。しかも異動先の部署もゴネて希望の所にしてもらったと聞いて呆れた。周りにも笑いながら話しているらしく、反省はゼロだ。
相手が不快に思ったらそれはセクハラなのだ
友達や先輩などの話を聞く限り、同じような体験をしている女性は多く、セクハラはまだまだ根深く、複雑な形で日本の社会に残っていると思う。
私も、最初に感じた違和感は、毎日のように送られてくるLINEや、容姿について過剰に褒めてくる所だったが、それをセクハラだと認められるようになるまで時間がかかった。
もはや一般常識になりつつあるが、相手が不快に思ったらそれはセクハラなのだ。
何か不快な事をされたら、自分の意思でそれがハラスメントなのかそうではないのか決める事ができる。
セクハラをする側は「可愛がってやっただけ」と本気で思っているかもしれないし、必ずしも周りも助けの手を差し伸べてくれるとも限らない。
セクハラなんて当たり前、いちいち騒ぐ物じゃない、と言う女性さえいるのも現実だ。
それでもセクハラなんて卑劣な事をしてくる奴のために、自分の精神をすり減らすなんておかしいじゃないか。
訴える事が難しければ距離を置く、信頼している人だけに相談する、といった手もある。そして何よりも自分を責めない事が大切だ。セクハラなんてしてくる時点で相手が100%悪いのだ。
あの上司は相変わらずLINEを送ってくるが、そっとブロックボタンを押した時、なんだかスッキリした。後々ブロックしている事がバレたら散々悪口を言われるんだろうけど。