優秀でいることで「特別」でいられた私に襲いかかった病
小さな時から私は優秀だった。小学校に入る前から遊ぶことより本を読み、勉強をすることがもっと好きだった。いや、正確に言うと、勉強をしていると周りの人々は私を褒めてくれたので、遊ぶばっかりの同年代の子より自分が優秀だという特別さを感じるのが好きだった。
小学校、中学校に入ってからは、自分の特別さを感じやすかった。
学年1位の成績、生徒会活動、校内大会での受賞など。どこに行っても、何をしても周りの人々は私のことを褒めてくれた。
私は同年代の子たちの憧れの対象となった。そのような憧れの視線、自分の優秀さを感じるのはとても気持ちよかった。
そして、もっと他人とは違う「特別な自分」になるために名門高校、名門大学への入学という目標も持っていた。
当然その名門高校に入学するための成績は既に満たされていたので、あとは受験するだけだった中学3年の夏、私は急性白血病と診断された。
まさか白血病とは思わなかった。1日4時間しか寝てなくて、勉強ばっかりしているから少し疲れただけだと思った。大したことではない。病院に行く時間なんてない。もっと勉強して今回のテストでまた1位をしなきゃ、という考えばっかりしていた。
結局、私は道で倒れてしまい、病院に行くようになった。大したことではないという私の考えとは違って、いくつかの検査が終わり、言われたのは「至急入院して治療を受けなさい」だった。
最初は当然信じられなかった。え、なんで?どうして?なぜ私に?これは夢だ、と否定するばかりだった。いつの間にか私の目から激しい雨のように涙が出ていた。え、いやです。私は学校に行かないといけません。と訴えても医者は覆してくれなかった。
未来なんか来ずに、死んでしまいたいと思った
入院してから2ヶ月間は最悪だった。全てを失った気分だった。一日中、私にできるのは病室の窓で外を見つめることしかなかった。毎日泣いて、吐いて、寝て、つまらないことの繰り返しをしている自分が嫌いでたまらなかった。
その日々の続きでふと「治療が終わって完治したら、後はどうする?」と思い浮かんだ。
私より優秀ではないと考えていた同年代の子たちは中学を卒業して、高校に入学して、自分の夢のために頑張っていく。なら私は?今私は何をしてる?あとは何をどうすればいい?まるで敗北者になった気分だった。一生優秀で特別さを感じて生きてきた私には初めて経験してみる気持ちだった。未来を考えると最悪で憂鬱になった。未来なんか来ずに、むしろこの病気のまま死んでしまいたいと思った。
何も食べなくて何も喋らなくてうつ病になった私は、心理相談を受けた。本当に何も話さないつもりだったが、つい自分の気持ちの全てを言ってしまった。
「誰よりも特別で、優秀な人になりたいのに、今の自分は敗北者みたいで嫌いだ」と言った私に先生が返してきたのは「そんなに焦らなくてもいいんじゃない?」という言葉だった。
初めて言われたことで、少しショックだった。というか、頭を打たれた気分だった。
ずっと特別さ、優秀さ、権力を求めてきた私が得たのは褒め言葉、憧れの視線だった。
人間関係、コミュニケーション、自分の心ではなく、結果だけを求めても「優秀だ」と褒めてくれるだけで、誰も私を止めてくれなかった。そうだ。私は私の見た目だけを褒めてくるのではなく、私の心を見て、慰めてくれることが欲しかったんだ。
無理しなくていい。焦らなくていい。そんなに焦らなくてもあなたは特別で、大事な人だ。と言われたかったのだ。
人より遅れたけれど、人生はちゃんと進んでいる
その日から私は変わった。運動をして、ちゃんとご飯を食べて、入院している他の子たちと遊んで、笑えるようになった。焦らなくてもいい。私はまだ人生の始まりにいる。少し遅れても私の夢を見つけて、正しい道で歩いていけばいい。約1年半の病院生活を終え、完治と判定をされ、1年遅れて高校に入学した。クラスメートは私より年下で、望んでいた名門高校ではないけど、以前より楽しい学校生活を送った。
また、入院している間にできた新しい夢の「留学」も今、日本で叶っている。私の人生は他人より少し遅れたが、ちゃんと進んでいる。焦らず、正しく、夢を叶うために。これからがとても楽しみだ。