ロリータファッションに身を包み、私の「かわいい」の封印を解く

「背が高くてかっこいい」「女子高にいたらモテそう」

これらは私にはお馴染みの言葉だ。私は背が高いし、顔立ちも昔から大人びていた。だからそういう言葉をかけられてることが多かった。それ自体は嬉しかった。スポーツをやっていたから背は伸びたら伸びた分だけ競技で有利になったし、褒められるのは気持ちよかったから。

けどあるときふと気づいた。
「あれ、私この言葉に縛られてない？」

可愛いを極めたくてロリィタになった私の価値観は厚底靴の足音で砕けた

レースにカチューシャ　無意識のうちに「かわいい」を封印していた

私大きくなってからレースのついた服着たことあったっけ？かわいいカチューシャつけたことある？……ないよね。
うん。別に好みじゃないなら着る必要なんて全くない。自分が素敵って思ったものだけ身につければいいんだから。ずっとそう思って服を選んできたつもりだった。
けど、ほんとはたぶん違う。かわいいものが好きな私を封印してた。

だって私は幼稚園の時キラキラした飾りがついた髪ゴムが大好きだった。綺麗な髪ゴムをたくさん集めてずっと眺めていたし、お母さんに結んでもらうときに今日はどの髪ゴムにしようかなって選ぶ時間中ワクワクしてとっても楽しかった。そんな私がかわいいのものが嫌いなわけがない。

母に友達に自分にかわいいを否定され、本当は心で泣いていた

じゃあなんでかわいいもの好きなの封印したんだろう？そうだ、思い出してきた。
小学生くらいのときじゃなかっただろうか。私の周りにはなぜだかかわいいものが好きな人たちが多かった。だからお下がりや貰い物ででかわいい服を貰うこともままあった。けどそれらを常に否定する存在が近くにいた。お母さんだ。
思えば、お母さんも背が高かったので、かわいいものを否定することを誰かに強制されたのかもしれない。だから、私がそのもらったかわいい服を着ると
「なにこのぶりぶりしたの」「大きくなったら着れないよそんなの」
といった。
どうやら私の「かわいい」は幼少時代のわずかな間だけ許されていたらしい。その時代の私は小さくてかわいい存在だから、かわいいものが好きでも許されていた。
でも、小学生になったらそうはいかなかった。お母さんは自分が好きだと思うものは私も好きだと信じて疑わないし、そのお母さんの好きはすでに「かわいいものは除く」ようにプログラミングされていた。

だから私は次第にかわいいものを着ることを恥ずかしいことだと感じるようになっていった。でも元は好きだから無関心にはなれず、その「好き」は「嫌い」とか「馬鹿にする」という感情に変化していったように思う。
そしてそうした恥じている雰囲気は伝わるものなのだろう。私がそのもらったかわいいぶりぶりした服を学校に来ていくと「なにその服。○○ちゃんには似合わないよ」と笑われた。どうしようもなく恥ずかしかった。だから当時の私は「だよねぇ。あり得ないよね。見てこの柄。リボンいくつあるのって感じ。だけどこれ貰い物だから着ないともったいないし」と笑い話にしていた。たぶん心の底では泣いていた。
けれどその時は私が本当はそういうかわいい服が好きでときめくことや、それをバカにされて本当につらいことを自分自身にも隠していた。だからその時の私はこの服はしょうがなく着てて、そんな服がネタになるなんてラッキーって本当に思っていた。そうしていままでやってきた。

素直に「好き」って言いたいから　ロリータファッションに挑戦する

エッセイを書いていたら、幼いころに見たレースがたくさんプリントされたワンピースや、ショッピングモールの一角にあるかわいいショップの情景が次々に浮かんできた。
私はまだそれらを覚えているくらい、かわいいものが好きなんだなあと実感した。だから、私はもうかわいいものを横目で見て「うわーすごいね。私あんなん絶対着れないわ」といって通り過ぎたくない。次に見たら「かわいいねー。私こういうの好き」って友達を誘ってじっくり見に行きたい。
だから今、ロリータ服を着る体験を申し込んできた。なんとなく私の中でかわいいの最高峰はロリータというイメージがあった。それを体験すれば私は私の「かわいい」をたくさん認めてあげられるんじゃないかと思って調べて申し込んだ。
正直めっちゃはずかしい。家でこれを書きながらすごい心臓がバクバクしている。けど、めちゃくちゃワクワクもしている。恥ずかしいなー。顔が赤い。たくさんの声が聞こえる。

「そんなん似合わないよ」「○○ちゃんはそういう系統じゃない」「背が小さい子がこういうの着るとかわいいけど私達みたいに身長高いと似合わないよね」「変だよ」

正直どこまでが周りの声でどこからが自分の声なのかわからない。けれど多分どっちもだと思う。昔にそういうことを言われてとても傷ついたから、もう傷つかないように自分で自分にそういう言葉をかけることで否定される予行練習をしてたんだと思う。あとは周りにそう言われないための予防策。自分で自分にそう声をかけて行動を思いとどまれば否定されることは無いから。

たとえ誰にも見せられなくても、私は私に「かわいい」って言うと決めた

けどもういいじゃん。「こういうの好きー」って言って「えー柄じゃない」て言われたら「うん、でも好きなのー」って言えるようになりたい。
もうそのロリータ服がどんなに似合わなくたって、私は私をほめちぎると決めている。「かわいいねー○○。着ると心がときめくね」って自分に優しくたくさん声をかけてあげると決めている。写真も撮ってもらう予定だけど私はその写真をsnsで公開することはおろか誰にも見せられないだろうし、そういった体験をしたことも誰にも言えないだろう。