私には好きなバンドがある。シドだ。高校生の頃に嘘のライブ歌唱映像を見たとき「あ、私このバンドを生で聞きたい」と思ったことがハマったきっかけだった。なのでもうなんだかんだ10年近く追いかけている。
好きなところをあげればキリがないのだが、絶対一生シドについていこうと決めたときがある。それは長い就職活動にようやくピリオドを打てた大学最後の年の秋だった。

最前2列目の席。信じられなくて何回もチケットを確認した

内定をもらった就職先では試用期間としてアルバイトに来てほしいと言われていたので張り切って職場に赴いたのだが、そこで少し意見を言ったらどうやら社員の癇に障ったらしく、あなたは社風に合ってないだとか、言い方がなってないだとかを会議室に2人っきりでグチグチ言われる羽目になった。

社会人になった今、理不尽なことを言われることはよくあることで、さらっと流してしまえばよかったのだと思うけれど、当時大学生だった私はそれをしっかりと受け止めてしまい、それはそれは落ち込んだ。
ようやく決まった就職先で自己否定に近いことを言われるのは本当につらくて、なんで私がこんな目に…と、人生どん底に落ちた気分だった。

そんなとき、半年以上前にチケットを取っていたシドのライブ『SID TOUR 2017「NOMAD」』の日がやってきた。
このライブは、それまで参戦したシドのライブの中でピカイチに運がいいライブだった。
ホールツアーだったのだが、席が最前2列目、それも下手側、最推し明希さんの目の前だったのだ。会場に入って席についたときは信じられなくて何回も何回もチケットと席を確認した。

しんどかったタイミングで欲しかった言葉をくれた奇跡

ライブが始まりシドの姿を見たときは感動のあまりに泣いた。あの忘れもしない真っ白な衣装をまとった姿が神々しくてより泣けた。
そんなあまりにも幸運すぎるライブの後半、MCタイムでボーカルのマオさんがこんな話をしてくれた。
「生きてるとつらいことって多いよね」と。そしてこう続けた。
「俺もしんどいことがたくさんある。でも、楽しいことがあれば頑張れるよね。だから、もししんどいことがあればシドのライブを楽しみにして毎日頑張ってほしい。俺も頑張るから。もし、それでも頑張れなかったら…ここに戻っておいで」

涙があふれた。ぽろぽろと。拭っても拭っても涙は止まらなかった。つらいことの真っ只中にいた私の心には響きすぎた。本当に本当に嬉しかった。
決して私のために言ってくれた言葉ではなくて、ただただタイミングがよかったというだけなのだけれど、私が一番しんどかったこのタイミングで、大好きな音楽を奏でてくれるバンドが、一番欲しかった言葉をくれるだなんて、なんて奇跡なんだろうと思った。

しんどい中でも生きる楽しみを与えてくれている

ライブが終わったあと、幸せの余韻にひたりながらこんなバンドを好きになれて本当によかったと思った。それと同時にこうも思った。こんな好きなバンドに出会えて本当に私は幸せだと。

このライブのあと、私はなんとかどん底から復活して、この就職先とのゴタゴタは新しいところで内定をもらったことによって終結した。
シドのお陰で…といえば少し言い過ぎかもしれないが、このライブのお陰で元気になれたし、なによりこの言葉は今でも私を支えてくれている。
ちょっとしんどいことがあっても、まぁ私にはシドさんがいるしな、と勝手に思っている。
シドの音楽を聞けばちょっとでもいいから前を向こうと思うことができた。

一昨年にあった握手会でマオさんと握手する機会をもらい、限られた時間内でスタッフさんに肩を掴まれながら「戻る場所を作ってくれてありがとうございます!」とギリギリ伝えることができた。
最後、スタッフさんに連れ去られ握手していた手が離れる寸前「頑張って!」と目をしっかり見てマオさんは言ってくれた。この感謝してもしきれないこの気持ちが伝わったのかは定かではないが、また元気をもらってしまった。伝わったかな。伝わってたらいいなぁ。

このご時世のためシドに会える機会もなくなってしまったが、ライブ配信だったりいつもファンのためにアクションを起こしてくれて、しんどい中でも生きる楽しみを与えてくれている。また感謝が積もる一方だ。
コロナ禍が終息したら絶対に、絶対に会いに行く。ひたすらに咲きまくって、ひたすらに暴れまくるのだ。だって、そこが私の帰る場所だから。