スキューバダイビングを初めてした時のこと。
大学2年生の夏、同じ授業を選択するクラスメイトに誘われて、人生初のスキューバダイビングに行った。

大学主催の仏像旅行の方が興味があったけれど、飛び込んでみることに

その頃の私は、中学生の頃の友達との喧嘩のトラウマから抜けきれず、友達という存在との距離感が分からず、「誰とも心から話せない。真の友達とは…」と悩んでいたので、正直行く気になれなかった。期間が被っている大学主催の仏像旅行の方が興味があったし、海の中の世界は見てみたいが、息継ぎができないくらい、泳ぎに全く自信がなかった。身体を使ったスポーツにはどちらかというと苦手意識を持っていた私は、断ろうと何度も思った。友達として誘ってくれたという喜びと、そこまで仲良くなっていないのに、数日間を共に過ごして息が詰まらないか不安な気持ちが渦巻いていた。
でも、ダイビングする機会は今だ!と飛び込んでみることにした。

仲良くなれたことや、自分で泳げることに安心して心が軽くなった

迎えた、スキューバダイビング合宿当日。数日間で実技と学科試験を通して、スキューバダイバーのライセンスがとれるという、パッケージツアーのようなものだった。誘ってくれた友達や、参加していた大学の教授、他の学年や学科の人たちとぽつぽつと話しながらの夜行バスで現地へ。

そこからは、コテージにみんなで泊まり、配られたダイビングの冊子で学びつつ、ウェットスーツを着て、20kgある酸素ボンベを引きずって海まで行き、潜っては帰るを繰り返した。
水の中へ入ってしまえば、あんなに重く感じた酸素ボンベも軽くなり、心配していた泳ぎに関しても、足ヒレのおかげでプールよりも上手に泳げた。着る時や脱ぐ時はきつくて大変に感じるウェットスーツも、水の中ではあたたかく包んでくれ、やってみれば意外と大丈夫なんだなぁと思った。
なにより、水の中の世界はキラキラしていて、スイッと魚が現れたり、海藻が森のように波に揺らめく様子を見ながら、バディになった子たちと打ち解けることができた。
自分の息が泡の粒となって、くるくると回転して水面へ向かって登っていく様子を見ながら、一緒に潜った人たちと仲良くなれたことや、自分で泳げることに安心して、心が軽くなった。

いつも頭の中でもやもやする私。自分を尊重できていなかったのかも

五感をフルに使って、呼吸の仕方まで、陸とは違う動きをすることで、私は別の生き物になったような体験をした。陸上で水や生き物をみるのとは違った環境に飛び込むことで、口から吸って鼻から出す空気を毎呼吸を感じ取ることが新鮮だった。私は友達と過ごす時に、うまく息ができていなかったなぁと、水の中で思った。

危険と隣り合わせだとしても、共に海の中を旅する仲間がいる心強さを学んだし、自分は思っていたよりもいろいろできるんだなと実感した。
いつも頭の中でもやもやしてしまう私は、周りばかりを気にして、自分のことを尊重できていなかったのかもしれない。
もっと身体を動かして、感じたことを言葉にしたり、やってみることを大切にしたいと心に決めたきっかけになったダイビングの経験だった。