私は、あんまりお風呂に入るのが好きじゃなかった。理由はいろいろある。単純に、ちょっとめんどくさい。もう少し正当に聞こえる理由を言うと、できる限り水道代もガス代も節約する必要があるから。あと、地球の有限な資源を無駄遣いしないため。ほら、お風呂はほどほどにすべきじゃない?...と言い訳してみたものの、やっぱり私はちょっと怠惰なんだよね、えヘヘ。ちなみに、自分の名誉のために書いておくと、一応匂いには気を使っているので日常生活で他人からくさいと思われたことはないと思います!
目に映る美しさはあなたを映し出すもの。萌子さんの姿から思い出した
言い訳はともかく、例えば3日ぶりとかでお風呂に入ると、体を洗い始めるとともにポロポロと垢が剥がれる。うわ、きたない…って思うのが普通の反応だと思う。というか、私もそう思っていた。こんなに私の体って汚いのか…。こんな垢いっぱい溜めるなんて、普通ならあり得ないよなあ、ダメだなあ私、怠惰すぎる…。うらめしい垢め!!って。
そんな私も、2020年秋に大流行のバチェロレッテに大ハマりしていた。それは、一人の女性が17人の男性から結婚相手を見つけるリアリティーショー。その女性である福田萌子さんが自分の弱さや苦しさも受け止めつつ、前に向かって歩もうとする姿勢を見て、私は思わずピンと姿勢が伸びた。さらに、萌子さんは、曇り空を見ても、美しいところを見つける。“The beauty you see is a reflection of you.” というフレーズを思い出した。あなたの目に映る美しさは、あなたを映し出すもの、とでも訳せばいいだろうか。萌子さんの心が美しいからこそ、世界の美しさに気づくことができるのだ。
体の垢を落とす作業は、経験を重ね自分が少し大きくなった証拠かも
ふっと、昔飼っていたトカゲのハクちゃんを思い出した。トカゲは、定期的に脱皮をする。エサのコオロギをいっぱい食べて、体が成長するにつれて、古い殻を脱ぎ捨てるのだ。体を岩にこすりつけて、古い殻をめりめりと剥がしたあとのハクちゃんは、とても誇らしかった。体が少し大きくなってサイズが合わなくなった殻を突き破って、むき出しになった皮膚は、とてもピカピカと輝いていた。
私がお風呂で垢を落とすのも、ハクちゃんが脱皮するのと同じなのではないかと気がついた。私は毎日、朝起きて、朝日を見て、栄養のある食事を食べて、体を動かして、本を読んで、映画を見て、人と話して、夕日を見て、音楽を聴いて、部屋を掃除して、ゴミを出して、寝て…。そんな暮らしのなかで、色々な経験を積み重ねて、自分が少し大きくなる。自分が成長して、もともと自分を覆っていた殻が小さくなったり、古くなったりする。そうしたものを、めりめりっと剥がして新しい自分になる作業。垢を落とすって、そういうことなんじゃないかな。垢がポロポロと剥がれるのは、私が生きて、少しずつ成長している証なんじゃないかなあ。そう思うと、汚さの塊みたいな存在だった垢が、少し誇らしく感じる。私の体を最前線で守ってくれていたものたちが、少し大きくなった私から剥がれ落ちたもの。ありがとう、垢たち…。そう思うと、お風呂に入るのが楽しみになってくるから不思議なものだ。
ありがとう、萌子さん。あなたのおかげで、自分の怠惰さも、剥がれる垢も、お風呂に楽しんで入る瞬間も、全部ひっくるめた、まるごとの自分を愛せるようになりました。私だけの感性を、これからも大切にしていきます。