飲み会で浴びせられる「あざとい」の集中砲火
透明度が高すぎてもはや目視できないアイドルグループ・日向坂46。彼女たちが歌う「アザトカワイイ」では、曲中にあざとい+かわいい=あざとかわいいポーズがふんだんに盛り込まれている(余談だが私の推しはきょんここと齊藤京子さん)。
テレビ朝日系列のバラエティー番組「あざとくて何が悪いの?」では、アザトカワイイ芸能人を代表する田中みな実さんとアナウンサーの弘中綾香さん、切れ味抜群のコメントで場を盛り上げる山里亮太さんが番組MCとして、面白おかしく世の中にあふれる「あざとさ」について語っている。
アイドルが歌うあざとさは、可愛いと思う。
テレビで語られるあざとさは、面白いと思う。
だが現実の世界で向けられる「あざといね」という言葉は、可愛いとか面白いとか、そんなポジティブな意味は含まれず、いつだってバカにされている気分にさせられる。
私が「あざとい」と言われるようになったのは社会人になって飲み会が増えてから。お酒が進んでくると、男性社員からの攻撃が開始される。
「まだ1杯目なのに顔真っ赤じゃん!」
そういう体質です。
「涙目だし、眠いの?」
いやだから体質です、てか眠そうなのは垂れ目だからだわ。
「なんか、そういうのあざといよね~(笑)」
はい来た~。完全に他人を小バカにしている「あざといよね」、頂きました。
周りの人間はそれを聞いて笑っている。なにが可笑しい?私を「あざとい女」と位置付けて楽しいか?こんなときに「は?あざとい?人のこと勝手にラベリングしないでいただけますか?お酒の席だろうと不愉快です」と言えたらいいのだが、実際はへらへら笑って「もう~やめてください~(笑)あざとくないですよ~」としか応えられない。
我ながら情けなくて反吐が出る。もしも私が「やめてくれ不愉快だわ」と言えたなら、おそらく飲み会の場はしらける。確実に沈黙を生み出してしまう。
そして「……おいおい、冗談だろ~?(笑)そんな真に受けるなよ~……」と私が悪者かのように扱われるだろう。
嫌な一言を受け流す痛みと、会社の飲み会の雰囲気を台無しにする痛み。どちらかの痛みを伴わざるを得ない場合、私は苦虫を噛み潰したような顔で仕方なく前者を選んできた。
次に「あざとい」と言われた時には……
「あざとい」と言ってくる人にそこまで悪気はないのだろう。
馬鹿にされて不愉快だと感じるのは私の被害妄想なのかもしれない。
だが、どうしても良い気持ちにはなれないのだ。
今流行りの「あざとい」という分類に誰かを当てはめることで、さながらバラエティー番組のタレントが笑いを誘っている気分にでも浸っているつもりなのだろうか。
ド素人である一般人がテレビの真似事をしても大して面白くない。
なんなら他人を傷つける可能性もある。誰もが山里亮太さんのように、あざといと言われた経験のある女性が観ても不愉快にならず他人を傷つけないキレのあるコメントなんてできるわけがない。
マグロ漁師でもないのに大間でマグロが釣れるか?釣れないだろ?どんな分野にも、その道のプロにしか使えない技があるのに、テレビタレントのようにイジリの真似事はしようとするなんて、茶番も大概にしてほしい。
……と、一人家でパソコンに向かっているときは強気な私は、一歩外に出ると「あざとくないですよ~」と愛想笑いをする意気地なしなわけだが、不幸中の幸いとでも言おうか、コロナ禍で飲み会が全くなくなったため「あざといね」砲火を浴びる機会が極めて減少した。
世界が落ち着きを取り戻した頃、「あざとい」と言う言葉を再び私に浴びせる人がいたならば、その時は愛想笑いを辞めて「それ、本当に面白いと思って言ってます?」と真顔で問いただしてやる。そう決意しながら、土曜21時55分はテレ朝を観ている。