「仕事と家庭を両立して自立した女性に!」が私の目標だったが、転勤族と結婚し、瞬時に消え去った。2019年、26歳だった。
私は特に結婚に憧れがあったわけではない。
小学生の頃から父親から25歳くらいで結婚しておけ、と繰り返し言われ、20代のうちに結婚!は私の中で義務になっていた。
若いうちなら結婚に失敗してもまたやり直せるから、というのが父の理由だ。
子供子供と言われて疑問がわき、結婚相談所を退会した
大学を卒業後、地元にUターンし就職した。学生の頃とは違い、職場はおじさんばかり、地方では同世代も少ない。
東京に残って就職すればよかった!と後悔したが遅かった。そしてあまりの出会いのなさに焦り、24歳にして結婚相談所に登録した。
眞子さまに似ているとよく言われる外見のせいか、私はおじさんウケがすこぶる良く、40代以上ばかりから見合いの申し込みが来た。
お相手の年齢は30代半ばまで、というこちらの希望などはなから無視である。
そして一回り以上年下の私を選んだ理由を問うと、皆口を揃えて、子供が欲しい、だから35歳以下の生める女性がいい、と宣った。
最終的に、結婚相談所は1年程で退会した。
子供子供と言われているうちに、だんだんと疑問がわいてきたのだ。
私の価値は年齢だけなの?
35歳以上の男達は自分の生殖能力に疑問を持たないの?
なんで女性にばかり求めるの?
精液検査はしたの?
子供を得るため以外のセックスは? もうすでにその年齢で、あと何年営めるの?
相談所のルールで、成婚退会するまで性交渉が一切禁止されていたのも心配だった。性的な相性が悪くて、後から後悔しないだろうか?
出産したら性欲なんて無くなるんだから大丈夫よ!ってカウンセラーは言うけど、そんなの人による。
苗字の変更を寂しがる母。なんだか親不孝をしているみたい
結婚相談所を退会後は、婚活アプリへ移行し、運良く数ヶ月後に結婚した。
既婚となった時の解放感、安心感、達成感はとても大きかった。
結婚なんて、今の時代必須じゃない。それでも未婚の状態にプレッシャーを感じていたのは、今思えばそれだけ結婚すべきという刷り込みが強かったのだろう。
しかし、解放感は束の間、結婚直後からモヤモヤすることになる。
苗字の変更だ。夫が一人っ子で、夫の両親の強い希望もあり、私が苗字を変えることになったのだ。
私自身は名前にそれほど強い思い入れは無かったが、氏名変更の手続きの煩雑さに、新婚早々苛立ちが募っていく。
とにかく多い。実は1年以上たった今でもまだ全て終えていない。
意外だったのは、母の反応だ。
我が家は父が婿に来ていたため、母は苗字を変更したことがない。
それゆえか、私の新姓のカードや通帳、LINEの通知を見るたびに、
違和感がある、他の家の人になっちゃったのね、知らない人みたい…と寂しげな顔をするのだ。
今の時代、結婚したからといって実家を捨て他家の人間になるわけではないのに、なんだか親不孝をしているような後ろめたさを感じた。
結婚って、出産子育てって、こんなに大変で難しいものなんだっけ?
そして、結婚というミッションはクリアしたが、またもや次の試練がやってきた。
夫婦共に不妊が発覚し、不妊治療を受けることになったのだ。
ベビーカーを押している街中のお母さん達が眩しい。
この人達はみんな、仕事と家庭の両立や、妊娠するまでの不安や、妊娠中の体調不良、出産時のいろんな激痛、出産直後から始まる昼夜を問わない育児を乗り越え、義実家とのいざこざなんかもかわしながらここにいるんだ…
と勝手に想像すると、お母さん達がとてつもない猛者に思えてくる。
不妊治療の検査の痛みに心が折れている私なんぞには、とてもそんな偉業は成し遂げられそうにない。
結婚って、出産子育てって、こんなに大変で難しいものなんだっけ…?
転勤族と結婚したのも、仕事を辞めたのも、不妊治療を始めたのも、再就職を延期して専業主婦になったのも、苗字を変えたのも、全部自分で選んだ人生でしょ?文句言うのはおかしい、自己責任でしょ?
確かにそうだ、全部悩んだ末に自分で選択したものだ。
だけど、理不尽さや不満を感じるのは悪いこと、身勝手なことなのだろうか。男に生まれていたらもっと楽だったのに。
今は不妊という新たなプレッシャーと戦っているが、このまま本当に戦い続ける必要があるのか、どこで区切りをつけるのか、悩んでいる最中だ。
結婚って、人生ってずっとこんなことの繰り返しなのかもしれない。
もう、結婚なんて制度、正直めんどくさい。
いっそ独身の方が仕事も好きに続けられて楽じゃないのか。
性的にも自由だ。誰と、何人とセックスしようが私の勝手だ。
この先たった1人の男性と死ぬまで添い遂げるのかと言われると、正直分からない。
結婚という制度があるから利用しているだけで、結婚制度が無かったとしても、夫をパートナーに選んで一緒に楽しく過ごしていただろうし。
でも、文句ばかりだが、なんだかんだ結婚はしてよかったと思っている。
思い通りにならないことを連続して経験し、結婚する前よりも人の痛みや悩みに敏感になれた気がする。そして、いい意味で、少しずうずうしくもなれた気がする。