私は高校卒業後、フリーターで働き始めるも、なかなか職が続かなかった。
なんだかんだと理由を付けてはすぐに辞めてしまっていた。
「このままではいけない」と思う自分と、「環境が悪い」と自分を変えようとしない自分とがいつもぶつかり合い、モヤモヤしていた。
母は、またすぐに職を探してくるからとそんな私を暖かく見守っていてはくれていたが、周りからは親を安心させてあげなさいとよく言われていた。

そんな時、また新しい仕事を始めると祖父に報告に行くと、良かった良かったと喜んでくれた。
そして、そっと話を始めた。

「これから先生きていく時に、損をしてでも人を助けなさい。
もしかしたら人を助けたが為に自分が嫌な思いをしたり、苦しんだりするかもしれない。いくら人の為に尽くしてもいい事なんか無いかもしれない。
それでもいいからとにかく人の為に尽くしなさい。
そうするとね、将来年老いた時に周りには貴女を想ってくれる人が沢山現れるんだよ。今は損をしていても、将来得をするんだ。
だからね、人がやりたくない事や嫌がる仕事は率先してやりなさい。そして、常に人の為に生きなさい。」
祖父は、とても優しく穏やかにそう教えてくれた。
元小学校教師の祖父らしい言葉だなあとおもいながら、「そんな完璧な人間になんてなれない」と、また逃げの自分は思った。

祖父の言葉を胸に「この店で一番お客様に愛されるスタッフに」と誓う

祖父は、とても明るくユーモア溢れる人で、いつも周りには祖父を慕う人で溢れていた。
反面、私は全く真逆の人間で、人付き合いも苦手で、自分の気持ちを上手く伝えたりすることもとても苦手だった。そのため、学生時代からいじめを受けたり、それにより不登校などを繰り返していた。
そのため、いつも逃げる癖がついてしまっていたのだ。
しかし、祖父の話を聞いた時に心のどこかで変われるチャンスかもしれないとかんじた。
なんだかんだと理由をつけ、とにかくやれる事をやってみようと久しぶりにワクワクしながら新しい職場に向かった。

仕事が技術系の販売業なこともあり、向き不向きがハッキリしているらしく、先輩からは「1年続けばきっとずっと続くよ」と言われた。
しかし、やはり今回も上司と上手くいかず、1年半がすぎた頃、辞めることを考えていた。

その時にふと祖父の言葉を思い出し、3ヶ月間必死に頑張って、このお店で1番お客様に愛されるスタッフになってから辞めようと自分の中で目標を決めた。
私は毎日無我夢中でお客様と向き合い、試行錯誤しながらお客様のより良い環境作りに務めた。

「損して得しろ」を行動に移したらこんなにも素敵な環境に恵まれた

そして、3ヶ月がたった時、店舗での売上もお客様評価も1番になった。それは私にとって凄く自信になった。
そして、突然本社からさらに大きい店舗への転勤が決まり、その店舗では今までとは比べようにならない程忙しかったが、スタッフにも、お客様にも恵まれ、どんどんと新たな自分を見つけることが出来た。
そして、5年勤めた先に、新しいスタッフとの出会いがあった。その人が、後の夫になったのだ。

人と関わることも苦手で、常に一人でいたいと思っていた私が、祖父の【損して得しろ】という言葉を行動に移したら、こんなにも素敵で暖かい環境に恵まれたのだ。

あぁこんなにも素敵な生活が送れたなら、もっと早くこの言葉を知りたかった。そして、いつも暗い毎日を過ごしていた学生時代の私に教えてあげたい!【損して得しろ】常に人の為に、人を想って生活をしてごらん。世界が見違えるほど変わるよ!!

現在は、二人の子供にも恵まれ、昔からではとても想像できないような毎日を送っている。
これからも私らしく、人の為に尽くしていこうと心に決めている。
そして、子供たちにもそれを伝えていきたい。祖父が私に教えてくれたように。
じいちゃん、私に素敵な言葉をくれてありがとう。