Y先生、本当にごめんなさい。高校3年生の時に先生に出そうとしていた手紙が、今、引出しの中から出てきました。

あれからいったい何年経ったのだろう。

小学校の時の担任だったY先生。卒業してからもずっと悩み多き私を気にかけてくれて中学、高校と、ずっと文通をしていた。先生はいつも便箋3枚にびっしりと返事をくれて、そこに書かれた文字は全て宝物で、いつも私の支えだった。

それなのに。なぜ。

先生に出すはずだった手紙は今私の目の前にある。それも、同じく便箋3枚にびっしりと書かれたものが。

先生へ届けることのできなかった悔しさと、十代の少し「イタイ」表現に思わず顔を背けたくなったが、今になって受け取って下さるのなら…と都合の良いことを思いながら、この場を借りて内容をそのままに綴りたいと思う。

高校に入るや否や鉛筆を投げ出してしまいました

『Y先生へ

お久しぶりです!

お元気ですか?

お返事ありがとうございました!

先生からのアドバイス、とっても為になっています!

近況報告、聞いてください…!!

私、「高校に入学した」というだけで満足してしまったんです。

中学校の時にこれ以上ないほどの勉強をし、高校に入るや否や鉛筆を投げ出してしまいました。

部活は吹奏楽部に入りクラスでも部活でもたくさんの友達ができました。でも、友達はみんな勉強もしています。しかしその時の私はその自分と周りの違いに何の違和感も焦りも持ちませんでした。

先生のお手紙にも書いてありましたが、やっぱり思春期特有の症状もたくさん出てきました。母との衝突、恋愛、友達と遊びまくる。オシャレ…といった家族を困らせることは一通りしました。(先生にだけのヒミツですよ!)

もっと早くに先生に話を聞いてもらえばよかった

一年生の時は先生や親にどれほど怒られても何も感じませんでした。「今が楽しければそれで良い。」と。しかし二年生になり、やっと自分の立ち位置というものを僅かではありましたが自覚し、もう一度本気で鉛筆を握ってみよう、と思いました。

でも障害は尽きません。「勉強と部活の両立」です。一年生の時は、勉強はしませんでしたが部活は一通りやってきました。部活オンリーと言ってもいいくらいです。一つやると一つできない。こんな自分に嫌気がさし、挙句、勉強も部活も両方ともうまくいかないことがあり悩んだ時期もありました。自分としてはこの頃が一番つらく苦しかったと思っています。今考えると、もっともっと早くに、先生のことを思い出して、話を聞いてもらえばよかったなあ~と後悔しています。(でも暗い話ばかり聞くのはイヤですよね…(笑))

私は私に遇ったところで精一杯の努力をし、ベストを尽くします

一時は勉強の為に部活を辞めようかと真剣に考えた事もありました。でも一人の友達から「私も辞めようと思ったこと何度もあったけど、それはつまり自分に負けることだと思うから辞めないよ。私の場合は、ね。あとは自分のことだから自分で決めな。」と言われました。ガツンと来ました。これは自分自身との戦いなのだと。それと同時にいかに自分が今まで無力で甘かったかと言うことを知りました。(遅いですよね…)

しかしそれからは強く生きようと思い、勉強も部活も自分のペースで両立させ、今年の7月に無事、文化祭の演奏で部活引退となりました。この時の達成感は何にも変えることのできないほどのものでした。

次は勉強オンリーです。トップクラスには全然追いつきませんが、自分の気持ちの中でトップの勉強をしていきたいと思っています。

志望校は地元の短大です。国公立の大学を目指す人が大半の高校からここへの志望者はめったにいないそうです。でもそんなこと良いんです。私は私に遇うところで精一杯の努力をし、ベストを尽くします。だから、絶対に合格してみせますよ!

それではまた!』

先生、ずっと待たせていてごめんなさい。