初めて覚えた「愛し愛される感覚」

人生で初めて「愛し、愛される感覚」を覚えた。

20代も半ばに差し掛かり、それなりに恋愛はしてきた方だった。
友人達には、恋多き女だと思われていたし、自分でもそう思う。

しかし、恋をする人数が多いということはすなわち失敗の数も多くなる。

今まで付き合ってきた人は、私の事を好きになってくれた人が多かった。
しかし好きになってもらった側として、そのイメージを壊したり、自分の素を見せたりしたら嫌われてしまうのではないかと勝手に考えてしまい、私が疲れてしまう、そんなパターンも多かったし、自分から好きになった人には好かれない事ばかりだった。

だから、いつも誰と付き合っていても満たされていなかった。
一見恋多き女に見えていたかもしれないが、自分の想いの一方通行だったり、相手の気持ちが重く感じてしまっていたり、いつになったら『相思相愛』を感じれるのだろうと心で思っていた。

そんな私もついに私の望みを叶えてくれる人と出会った。

出会った瞬間から、魅かれてしまい、出会いから付き合うまでのスピードは速かった。
友人達には、恋多きを通り越して軽い女に見えていたかもしれない。

でもそんなことはどうだってよかった。
彼といる時間が楽しくて仕方なかった。ついには同棲まで始め、毎日一緒だった。
その分喧嘩も多かったけれど、何より私は「喧嘩」が成立することがうれしかった。
今までは、自分もそんなに相手に対して熱くならなかったし、何をしても許してくれるような人ばかりだった。
お互いが本気で「喧嘩」出来る事自体がうれしくて、愛情を感じてしまっていたのだ。
喧嘩して、仲直りして、二人の趣味の映画を一緒に観て、朝まで映画についての討論をする日もあった。お互いがお互いに「依存」していると、今思えばすぐに分かる。しかしあの頃は、今この瞬間だけ生きていた。

「諦めさせてよ」なんてわがままだった

そんな私たちにも別れはやってきた。
彼が別れ話を切り出してくる気はしていた。
優しい彼だから、言いだせなかったのだろう。2日間くらいはそっけない返事が多かった気がする。しびれを切らせた私は彼に、
「なんか言いたい事があるんでしょ?言って?」
と問い詰めた。それでも無言を続ける彼を見ているのが苦しくて、虚しくて、私は泣きながら、
「どうせ別れ話なんでしょ?早く言ってよ」
と言うと彼はようやく口を開いて、私の予想通りの別れ話を切り出した。

元々口数が少ない彼。社交的ではないが、その分一途に愛してくれる人だった。
浮気の心配もした事がないくらい、誠実で真面目。
そんな彼の事だから、私を傷つけない言葉を必死で探していたのだろう。
それもすべてわかっていた。
わかっていたからこそ、自分が惨めで仕方なかったのだった。
どうせ傷つくんだから、どうせ別れるんだから、優しい言葉なんかいらない。ひどい言葉で諦めさせてよ。
そんなことばかり考えていた私。

でも今になって後悔してるよ。

優しい言葉はいらない。諦めさせてよなんて私の一方的なわがままだったね。
被害者ぶってごめんね。
あなただって本当は言いたくない事を言ってくれたのにね。
そのやさしさを受け止められなくてごめんね。

全部、全部ごめんね。

いつかまた大人になって会えたら、伝えるからね。