結婚と同時に同棲を始めた私たち。結婚をした時、世間は某感染症の影響を受けている真っ最中だった。そんな中始まった結婚生活は、私は在宅勤務、彼は基本出社で時々在宅勤務というスタイルが続いた。

彼が自分と同じように在宅勤務をしていることで、突然気がついた

在宅勤務では、打合せがなければ身支度も簡単に済ませられて時間に余裕ができるため、仕事前に掃除や洗濯、夕飯の準備ができる。朝できなかった分はお昼休憩に済ませられるため、共働き夫婦にはとても良い働き方だと思っていたし、実際に助かることも多かった。

しかし、段々と違和感や苛立ちを感じ始めたのは、彼の在宅勤務が増えてきた頃。
彼は勤務が始まる15分前に起床し、朝食の食パンを食べてパソコンに向かう。
私は彼が起きる前に洗濯をして、彼の使った食器を洗って仕事を始める。
彼が寝ているのに大きな音をたてるのもなんだかイヤらしい気がして、彼が在宅勤務の日の掃除は朝、時間があったとしてもお昼休憩にするようにしていた。そういえば、始業前と休憩時間、私は毎日慌ただしくしていた。
一人で家にいる時には気がつかなかったし、全く苦痛にも思わなかったが、彼が自分と同じように在宅勤務をしていることで、突然気がついてしまった。
気がついた時の私は、「彼のが労働時間が長いし、疲れているから仕方ない」「私自身、体力に余裕があるから特に問題ない」と思っていた。

何が優しさで何が彼への甘やかしになってしまうのか、分からずに

しかし、ふと思った。「子どもができても彼は変わらないのだろうか」と。
私たち夫婦は結婚後から妊活にも励んでいる。そのため少し先のことを考えるときは必ず、「子どもができていたら…」という想定もするようになっていた。妊娠中、出産後、私は今と同じように家事は出来ないだろう。そんな時に彼は何をしているんだろうか。
そんなことを考えてしまった。今私が全てこなしていたら、彼にとってそれが当たり前になってしまうのではないかという恐怖を感じ、それからはなるべく色々なことをやってもらおうとした。

でも、なかなかうまくいかなかった。
細かいことを言いすぎてしまったり、お願いが指示や命令になってしまって彼の気分を害したり、彼とも喧嘩が増えていった。本当はやってあげたいとも思うし、正直自分でやる方が問題も起こらない。何が優しさで何が彼への甘やかしになってしまうのか、どうしたらいいか分からなかった。
そして段々、彼が「やっていないこと」にしか目が向かなくなった。そうなると当然、「彼は何もしてくれない」という思いが強くなる。私は日々苛立っていた。

お互いを思って行動していたのに、気がつかずすれ違っていったのかも

そんな毎日殺気立っている私に、彼はいつも「ありがとう」と言っていた。ありがとうと言うくらいなら自分でやってと思ったし、彼からの「ありがとう」は私には全く響かない、何の意味もない言葉だった。
だからなのかその当時、私は彼に「ありがとう」なんて言っていなかったが、ある日何となく洗い物を終えた彼に「ありがとう」と伝えたところ、彼は100点をとった子どものような笑みを向けてきた。
ありがとうと言われると、彼は嬉しいんだな、と思った。
だから私にも毎日伝えてくれていたのかな。
これまでのうまくいかなかったものが腑に落ちた気がした。ずっと私たちは、お互いのことを思い考えて行動していたのに、気がつかずすれ違っていったのかもしれない。

それからの私たちは、よく会話をするようになった。
会話が増えることでお互いの気持ちやタイミング、やってほしいことが少しずつ分かるようになり、以前のような苛立ちが減った。
それと私は、感謝の気持ちを言葉で伝えるようになった。
我が家では毎日、沢山の「ありがとう」が飛び交っている。
不思議と今は、彼からの「ありがとう」が嬉しいと感じている。