「調子乗ってるよね」。その一言で世界は変わり、私は自分の意思でいじめに加わった

「あの子最近調子乗ってるよね」
あ、終わった。
誰かの一言で世界が変わることがある。
それまで友達だった子からある日突然無視されること、子供の世界ではよくあることだと思っている。嬉しいことに大人になってからはそんな目に遭っていない。「子供は気楽でいいよな」なんて、これからも絶対言いたくない。
「調子乗ってる」とされたのは私ではなく友達だった。仮にAちゃんとする。Aちゃんと私はすごく仲良いってわけでもなかったけど(すごく仲良い子なんてその時は誰もいなかったけど)、話しやすかったしけっこう好きだった。
その日から始まった、Aちゃんへの無視。
わたしたちは「調子に乗っている」という言葉を放った本人Bちゃんと、先程のAちゃん含め6人のグループでいつも行動していて、その言葉をきっかけにして、だんだんと5人のグループと1人に分かれた。
話しかけられても返事は最小限、こちらからは一切声をかけなくなった。そして私もその暴力に加わった。どこが調子乗ってるのか、何が気に食わなかったのか全くわからなかったのに。
「ねーねー」いつものようにAちゃんが話しかけてくる。ああだめだ、Bちゃんが見ている。私がまともに返事をしなかったときの「えっ」という顔。昨日までは普通に話していたのに。
私は無視されることがどんなにつらいことか知っている。
小学生のとき。もう覚えていないけど友達に何か嫌なことをされて、私にしてはとてつもなく勇気を出して「やめて」と言った。わかったよ、とやめてくれて、なんだ最初から言葉にすれば良かったんだ、とホッとした。
次の日、「おはよう」が無視された。その子だけではなく、仲良くしていたあと2人の友達にも。それから帰りまで私は誰とも会話することなく、明日からもこうなのか、どうしよう大変なことになったという思いだけがグルグルしていた。
家に帰ってから友達から電話がかかってきた。
「わかったでしょ」
電話からは誇らしそうな声がしていたと思う。
「あたしに逆らうとこうなるんだよ」
ああこれで明日から無視されなくなるという気持ちでいっぱいで、その時は怒りなんてものは少しもなかった。早くこの不安から解放されたかった。
「うん、わかったよ」
それから、引っ越すまでその子には何も逆らわないことにした。
無視って、人としての尊厳を踏み躙られることだと分かっていたはずだ。
それを知っていてなお私はAちゃんを無視した。傷ついた人ほど人に優しくなれるなんて、そんなのうそだ。そのときの私にとってはAちゃんより、その場をうまくやり過ごす方がずっと大切だったのだ。
やがてAちゃんから話しかけることはなくなり、休み時間は一人で本を読むようになった。
その後、何の前触れもなく無視は終わった。
Aちゃんは嵐が過ぎ去ったのを感じ取り、何事もなかったようにわたしたちは6人グループに戻ったのだった。
なんてくだらないいじめなんだろうと思い出す。でもあの時は学校が全てで、狭い狭い枠の中からはみ出したら死んでしまうかのように思っていた。結果的に自分の意思で私は人をいじめてしまった。どうか、Aちゃんの記憶からあのときのことが薄れて、どうでもよくなっていますように。
Aちゃん。
あのとき無視してごめんなさい。
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