20代後半。結婚願望なんて。
平日は高速通勤と激務、週末は仕事で関東との二重生活をしている母と交代で父親の介護。そんなキラキラしたこと考えてらんない。

旦那の世話して、自分もフルで働いて、自由な時間もお金も少なくなって、なんのメリットがあるのか。そんなに若いうちに結婚して、離婚率3割だし、すぐ別れちゃうんじゃないの?

家族や親戚から結婚の話題が出るたび「恋愛してる余裕なんかない」と苛立つ

SNSで幸せそうな結婚報告を見るたび、モヤモヤした気持ちになりながら、「いいね」を押す。結婚式に呼ばれれば、ご祝儀分取り返さねばと必死で完食する。だんだんとネイルやヘアセットもセルフで済ませるようになる。20代前半は出席すること自体が楽しかったのに。大体仕事が忙しすぎて、新札を用意できず、式場のフロントで両替してもらう始末だ。

家族や親戚から結婚の話題が出るたび「恋愛してる余裕なんかない」と苛立つ。田舎で27才実家暮らし彼氏ナシの肩身は狭い。結婚がゴールみたいなそんな前時代的なこといつまで言ってるんだ。私は1人でも大丈夫だ。と思いながらも、やはりどこかで引け目は感じていた。親には内緒でマッチングアプリを始めたところで、メッセージのやり取りも億劫、何人か会ってみても「女性なのにそんなに働いて偉いね」の言葉の数々。女性だから何、働かせてくれ。こんな程度じゃ、将来自立していけないんだ。1人で生きてくためには。働かなくちゃ、もっと、もっと、もっと…。

そして私はパンクした。

過労だ。メンタルクリニックに通い、仕事も辞めた。何も残らなかった。
あんなに卑屈な気持ちで見ていたSNSの結婚報告。本当はとっても羨ましかったことに気づいた。誰かを愛し愛されること、安心感、充実感、幸福感。誰か、私を、愛せよ。

両親も「結婚するなら」と介護スタイルを見直してうまくやっている

あれから2年。
学生時代の同級生と結婚した。あまりのスピードに周囲からはおめでた婚を疑われた。それでも全然良かったけど、そうではない。30才を迎える2人のタイミングだ。29才滑り込み?それで大丈夫なの?勢いなんじゃないの?あの頃のは私なら、そう思ってた。

あの頃「どうなの?」と思っていた数々の気持ちは、どうってことなかった。愛する人と2人で一緒に、寄り添いながら、時には壁を乗り越えて歩んでいければ良いのだ。新婚の脳内お花畑かもしれないけれど。ありがたいことに主人は何事にも協力的。よくある夫婦間の不満みたいなものは結婚から1年、今のところない。両親も「結婚するなら」と介護スタイルを見直して他者の手も借りながらうまくやっている。むしろ負担は減った。

激務でパンクした私は、今は定時の仕事をのんびりしている。自立できる女性から平凡な主婦になっただけかもしれない。まだそこらへんの「キャリアへの後悔」は払拭しきれていない。収入も減ったし。でも生活には全然困らないし、そういう幸せもあるんだと、何年か前の私に言ってあげたい。そうカリカリしなさんな。