私は28歳で、婚姻歴は二年半ほど。子どもはまだいない。
元々全国を飛び回る働き方をしていて、バリキャリとまでは言わないが、「そこそこキャリ」くらいには働いていたのを、夫と一緒に暮らす為に、いわゆる地域総合職に職群を切り替えた。

私の勤める会社は、国内でも飛ぶ鳥を落とす勢いの、とある大企業なのだが、残念なことに、まだ社内で要職に就いている女性は一握り。そして、みんな独身だ。

世の中に「マミートラック」という言葉がある。子どもを産んだ女性が、子育てと仕事の両立は出来るものの、昇進や昇格とは縁遠いキャリアコースに乗ってしまうことを指すが、本当に残念なことに、我が社ではマミーより前、「ミセス」になった瞬間から昇進・昇格の対象から外される、「ミセストラック」が存在する。

女性は結婚すると「個人」のチャンスを取り上げられる

女性が結婚すると、じゃあ次は子供だな、安心して働けるように責任の重い仕事はしないで済むように「配慮してあげよう」となることは想像に容易いが、その責任の重い仕事の多くは、個人が望むキャリアを叶えるためのチャンスなのだ。
「女性」だから、仕事が忙しくなると困るでしょ?と配慮され、「個人」のチャンスを取り上げられてしまう。

一方、男性はというと、女性とは反対の現象が起こっている。結婚して、身を固めたんだね。じゃあ、もっと仕事を頑張って、家族を「養わなきゃならないね」。結婚と共に役職が上がり、せっかくの新婚生活なのにサービス残業まみれ。
それが、その人の求めていたキャリアであればいいのだが、そうでない場合、性別で括られて「配慮」された先の「個人」が無視される。そんな不完全な会社が、悲しいことに弊社なのである。

私も例外なく、弊社の「ミセストラック」に乗っている一人だ。
ミセス、マミーの先輩たちは言う。「働かせてもらえてるだけ有難い」と。
そして、後輩たちは「やりがいが無くなったので」と去っていく。じゃあ、私は?

自分を諦めたくないからミセストラックもマミートラックもぶち壊したい

私は、ミセストラックをぶち壊したい。そして、できればマミートラックも。
私はこの会社でまだやりたいことがある。そう思えているうちは、まだ自分を諦めたくない。
同様に、家庭もそうだ。
私は夫が大切だし、いつかは子供を授かりたい。でもそれを、自己実現を諦めた先の未来にしたくはないし、自己実現の為に子供や、夫との時間を諦めたくない。
つまり、どっちも欲しい!
両方を望んではいけないんだろうか?

私はこの会社が好きだ。
上記に書いた以外のことでも、不完全で、理不尽だと感じることもある。それでも、自分の仕事に意味を見出して、私は誇りを持って働いている。

社会人マラソンは同じところをぐるぐる走っているわけじゃない

かつて、「ヨーイドン」で始まった長い長い社会人マラソン。私はいま、あまり景色の変わらないミセストラックの上をぐるぐる走っている。
周りから見れば、ただぐるぐる走っているだけのように見えるだろう。だがそうではないのだ。

足元の石ころの数、毎日の空の色の変化、昨日より一秒早く走る方法、時には、変わったステップの踏み方まで。色んなことを考え、実験しながら、明日の自分が今日より輝く為に走っているのだ。
そして、男も女も関係なく、社会人マラソンに迷った人が私の走る姿を見た時、あの人面白いなとか、あの人みたいに走ってみよう、と思ってもらえるような人間になりたい。

それが、私の働く理由だ。