生理が来ない。
生理日管理アプリを開いて、何度更新しても『生理予定日から7日以上経過しています。』と表示される。
スマホを握った手がじっとりと汗ばむ。
避妊はしてるけど自信がない。
妊娠したかもしれない。結婚しないといけないかもしれない。
ああ、どうしよう。頭の後ろがジリジリしてきた。

付き合って5年結婚に踏み出せないのは金銭的問題

付き合って5年、同棲して3年。喧嘩もするが彼との仲は概ね良好だ。
3年前には周りから、結婚式には呼んでねと囃された。
その度におでこにシワがない私は、まだしないよとニヤついた。
3年経って周りはもう結婚したらと言うけれど、結婚に踏み出せない問題がある。
私たちは貧乏だ。
お互いに、お金よりも優先させたいやりたい事が存在する。
時間をやりたい事に割きたい私は、アルバイトをして少ない給料で生活している。
そういう生き方をかっこいいと言ってくれる人もいるが、実際私のやっている事は社会不適合者だ。経済的な自立ができているとは言い難く、親のスネをかじり続けている。

心の中では結婚して子供のいる誰かより自分の方が良いと思おうと必死

SNSでは、月に1回くらい私の友人ということになってる誰かが結婚か妊娠か出産をする。
3年前は素直にめでたいと思っていたけれど、今では嫉妬の対象だ。
特に赤ちゃんの写真には過剰に反応する。
「うわ、また投稿してる。あなたの子供に興味ないって。なんか自分のやりたいことに全力で取り組めないのって、かわいそう。
私は身軽だし、あなたができない多くのことができる。貧乏だからおしゃれにお金はかけれないけど、ユニクロで充分。だって脚も太くないし、お腹もくびれてるから。」

本当にそう信じているわけではない。この考えが間違っていることくらい私もよくわかっている。それにこんなこと他人には決して言わないし、言えない。
でも、心の中では結婚して子供のいる誰かより、自分の方が良いと思おうと必死だ。

私は何様なんだろう。結婚したら楽になれるんだろうか。

自分の若さを振りかざして、結婚して子どものいる人を嘲っている私は、確実に歳をとってもう30歳間近だ。アルバイト先で自分よりうんと若い女の子が、歳上の女性が急に怒るのを見て「きっとあの人更年期なんですよ」と意地悪に笑うのを聞いて、ああ、若いってなんでこうも愚かなんだろう。と若さすら馬鹿にする。

私は何様なんだろう。アラサーってこんなに不安定なものなのか。結婚したら楽になれるんだろうか。この仄暗い嫉妬心から足を洗いたい。

私は結婚したらいい世界にいけると信じている。まるで宗教のように。結婚が恐怖心を掻き立て、その恐怖で私を結婚へ導こうとする。
「貧乏だって結婚してしまえばいい。結婚式を挙げずに籍を入れてしまえばいい。もういい歳なのだからはやく結婚してしまおう。」
そう考えると気持ちが軽くなる。
ふたりだけの事なら、もうとっくに結婚してるかもしれない。

今のふたりの経済状況では両親は結婚を許さないだろう 

でも結婚は、ふたりと、ふたりの家族の事だと私は思う。
今の経済状況では両親は結婚を許さないだろう。
それに、これまで散々両親の期待を裏切り今もなお迷惑をかけている身としては、もうこれ以上両親に不安な思いをさせたくない。

妊娠してたら、今の生活は終わらせなければいけない。
親としての責任を持ち、子供を育てるお金をきちんと稼ぎ、結婚して子供を愛していこう。
お父さんとお母さん、孫を喜んでくれるかな。
さようなら、やりたい事。

アルバイト帰りに勇気を出して妊娠検査薬を買った。
家に帰っていざ使おうと、トイレでズボンを下ろすとパンツに赤いシミができてた。
ホッとしたような、少し残念なような。
とりあえず暫く貧乏のままでいいらしい。
鈍い痛みがゆっくりのしかかってくる。