自慢じゃないけれど、わたしは今までビリになったことはなかった。
学期末テストとか、徒競走とか、順位をつけられることは 今までたくさんあったけれど、ビリになったことはなかった。いつも半分よりは上だった。なんなら学生時代は優等生の部類だったと思う。真面目で素直。スポーツも勉強もよく頑張る子。クラスの中心にいる方ではないけれど、そんな評価を受けて生きてきた。
全国営業成績ランキング最下位。上司にため息を吐かれる度に、私は息ができなくなった
そんな私は、社会人になって生まれて初めて最下位というものを経験する。それは営業部に異動になって3ヶ月目のことだった。
全国営業成績ランキング。
最下位。
最下位。
最下位。
毎日配信されるランキング。毎日見ても結果は変わらなかった。わたしは全国の中で最も成績が悪かった。びっくりした。絶対に誰かがなる最下位。そうだよね、今までだって最下位の人は必ずいたんだよね。知っていた。知っていたけど分かっていなかったー。
家に帰って、意味を噛み締めるように、声に出して言ってみた。
「全国で、最下位。」
私は何も分かっていなかった。
地獄である。毎日朝から晩まで働いて、スーツで外回りをし、夜でも休日でも連絡があれば全て対応した。それでも全くダメだった。電話口で怒鳴られることも、話し方がムカつくと言われることも、嘘をつくことも、つかれることも、全部全部飲み込んできた。お金を生み出すことがどんなに難しいことかを思い知った。体力と精神だけが削られる日々。上司にため息を吐かれる度に、私は息ができなくなった。
生きた心地がしなかった先月。毎日お風呂で泣いた。悔しかった。営業部に一緒に異動になった同期は体調を崩してしまったので相談できなかった。勤務地も変わったので、前の部署の人に会うこともできなかった。頑張る方向が間違っているのか。どうすれば上手くいくのか。何もわからなかった。年末だろうが最後の最後まで粘って、少しでも多くの売上を立てている営業さんが羨ましかった。そんな風に頑張れる心が欲しかった。窒息しそうだった。
限界に気付いたけれど、考えるのを辞めなかった。かっこいい20代なんて捨ててしまえ
限界を感じて帰った実家は、あたたかく少しだけ息ができた(年末年始、コロナで帰省を自粛された方には本当に申し訳ありません)。
限界だと自分自身で気付けたことは幸運だったのかもしれない。それでも考えなければならないと思った。考えるのを辞めることの方が怖いと思った。どこで間違ったんだろう?わたしにはもしかしたら何もないんじゃないか。大学まで出させてもらったけれど、特別な資格は取らなかった。文系出身、総合職採用。営業部配属。キャリアなし。恋人なし。個性もなし。つまらない私がここで生きていくにはどうしたらいいか。つまらない?本当にそう思ってる?結局プライドがあるんじゃないの?
…無理に生きようとしなくてもいいかも。死んだ方がマシだわって思ってもいいのかも。考え続けて底まで深く潜って、ふと、そんなふうに思った。
毎朝会社を爆破したいと思いながら出社し、人に裏切られたら家で泣き喚き、毎日休憩時間にマックを食べたっていい。かっこいい20代なんて捨ててしまえ。ただし、繊細であることを簡単に手放すんじゃねえ。
死んだ方がマシより、生きててよかったが多ければいい。今日も、生きててよかった
プライドを捨てた。成績の良い人をとにかく真似た。メール一通、電話一本、どうしたら伝わるか。工夫をした。失敗もした。仕事をし続けた。満員電車に揺られながら、朝早く家を出て夜遅く家に帰った。休みの日は眠り続けた。
そして今月、全国営業成績ランキングトップ10入りを果たすことができた。
ノルマを達成できて嬉しい気持ちには正直ならなかった。そこにあるのは息ができる安堵のみ。それに1ヶ月そこそこの努力がすぐに反映されるような仕事じゃない。今回はきっと運が良かっただけ。
でも。向いていなくても、絶対にできないと思っていても結果は誰にもわからないし、「絶対」はないらしい、ということはわかった。たぶん私の20代はつらい。ということもわかった。
2021年。私は生きるために「死にたい。」とか「死んだ方がマシ。」とか思う自分を許すことにした。少し楽になった。
だって死んだ方がマシなことは結構あると思う。あっていいよ。つらいことはつらいもの。
つまり、死んだ方がマシな事例よりも生きててよかった~!な事例が多ければいいんだ。そこがひっくり返らなければいいんだ。今日はお鍋の〆の雑炊が本当に美味しくできた。ビールも美味い。生きててよかった~!