時を戻して人生をやり直せるなら、私はあの子に謝りたいことがある。
「ごめん」
たったこの3文字があの時どうして言えなかったのだろうか。
まだ大人でもない、人間としても未熟だった中学生の私の話をしたい。

その場にいないかのような扱いを受け、透明人間になった気持ちだった

私が中学1年生の時、仲のいい女の子2人といつも一緒にいた。
休み時間や、課外授業、放課後もいつも3人で遊び、
当時は歳をとっても私たちは仲良しでいるんだろうな。と当たり前のように思っていた。

ある時、いつものように3人で一緒にいると、A子が楽しそうに私たちに話してきた。
「私、A君のことが好き! だから応援してくれるよね?」
私は何も考えずに友達の意見に頷いた。
当時の私は恋だの愛だの全く分からなかったがA子が楽しそうにしていたので、私自身も楽しく、私もいつか好きな人が現れるのかなぁ。なんて考えていた。

それから1か月、その瞬間は突然訪れた。
いつも通りの朝、いつも通りの制服、いつも通りの通学路、いつも通りの教室……いつもと様子が違う友人たち。
明らかに友人たちの様子がおかしく、態度がよそよそしい。今まで一緒にいたのに、初めて会う人に話すような話し方。同じ場所にいるのに、その場にいないかのような扱いを受け、透明人間になった気持ちだった。
「私、何か2人の気に障ることを言ったのだろうか?」
いくら考えても、思い当たる節がなく私は数日間1人で行動をしていた。

「こんなことで私のことを無視するなんて最低だし、嫌いになった。」

何日後、A子が私を呼び出した。何を言われるのか1ミリも見当がつかない。
私自身どうすればいいか分からず、A子が口を開くまで、私はずっと下を向いていた。

A子がようやく口を開いたと思うと、ボソボソと小さい声で話し始めた。
「あのさ……。私、A君が好きって言ったじゃん。でもA君はアンタのことが好きなんだって。どうして?私、A君のこと好きって言ったよね?」
私は最初、言葉の意味が分からずどう返答すればいいか分からなかった。
私はA君に対して好意を持ったことは1度もなく、クラスメイトの1人という認識しかなかった。

「どうすれば、平和に解決する?」
「どうして私が悪いの?」
「なんで私に対して怒っているの?」
様々な疑問や感情が私の中で渦巻き、言いたいこともまとまってないのに、気づいたらA子に声を荒げていた。
「そんなことで私のことを無視してたなんて意味が分からない。私はA君のこと1ミリも興味ないのにA子がこんなことで私のことを無視するなんて最低だし、嫌いになった。」
A子は何か珍しい物でも見たかのような、ぽかんとした顔で、私にただひとこと言って去っていった。
「ごめん」

固い絆で結ばれていても、些細なことで壊れてしまう

それから私はA子と話を1度もしていない。当時一番大切にしていた友情を私は失った。
後日謝ることや、手紙で謝る等、手段は色々あったが私は謝らなかった。
中学1年生の私には、初めての恋愛絡みの出来事で、私自身が謝るべきなのか、誰が悪いのか分からず、どうしていいか分からなかった。

あの時私も一言、
「ごめん」
と謝っていたら友情関係は続いていたのだろうか。

24歳になった私は、今でもたまにA子のことや中学時代を思い出してしまう。今の私は沢山のコミュニティで、様々な経験や感情を学ぶことができた。
一方中学時代の私は人生経験も浅く、人間として未熟で分からないことばかりだった。
しかし私は、友情は固い絆で結ばれていても、些細なことで壊れてしまう可能性があることを、この経験を通して学ぶことができた。

当時の私にとって、A子の怒りは“ちっぽけで意味の分からない事”だったが、当時のA子の中では“一番重要な事”だったのかもしれない。

もし今となってA子に謝ることができたら、A子はこのことを覚えているのだろうか。