彼の人生についていけなかった。それが理由。
私の初めての彼氏との出会いから別れまでを、ここで供養させてほしい。
付き合って1週間、連絡がなかなか来なくなった
彼とは大学2年の終わりに授業で出会った。実は大学入学初日に少し言葉を交わしていたが、以来一度も顔を合わせていなかった。
少し遅刻してきた彼が空いている席に座ろうと、通路沿いに座っている私の肩を後ろから叩いた。お互いの目が合った瞬間、時が止まった。
授業後にLINEを交換してからメッセージや電話が盛り上がり、数日後の初デートで付き合うことになった。
翌日も会ったが、もう死んでもいいと思うくらい、幸せだった。
それが、2回目にして最後のデートとなった。
付き合って1週間、連絡がなかなか来なくなった。
釣った魚に餌をやらない現象とはこのことか?と思ったが、どうやら彼は代表を務めるテニスサークルの仕事で忙しくしていたらしい。友達からのLINEも返せず、常に100件以上溜まっていると言っていた。
会うのは落ち着いてからでいいよ、頑張ってね、と毎回エールを送った。
新入生の勧誘、新入生歓迎会、トーナメント……。一つのイベントが終わるとまた次のイベント準備が始まり、彼の仕事が落ち着く気配がない。
付き合っているのに全然会えないことを不満に思いながら、彼とサークルのSNSを毎日食い入るようにチェックしていた。
サークルの仕事にバイト、付き合いよりも彼の生命が心配だった
そんな中、サークルのSNSに納涼船イベントの写真が投稿された。彼の周りを女の子が囲んでいる。裏切られたと思い込んだ私は説明を求めて彼に電話をかけた。
彼は自分は仕事を必死に果たしているのにそのように受け取られて心外だと言ったが、私は素直に飲み込めずにいた。
女友達にその状況を話すと、それはひどい!その人大丈夫?と心配され、彼への疑念が助長されてしまった。
ある時、深夜に突然電話がきた。運転中に事故ったらしい。
怪我はないものの、いわゆる当たり屋に絡まれたようだ。詳しくは知らないが、彼は70万円を支払わなければならなくなった。彼は目立つからか喧嘩を売られやすく、カッとなるとそれに乗せられてしまうタイプだった。
彼はサークルの仕事とレストランのバイトを抱えながら、70万円のために塾講師・パチンコ屋と2つのバイトを追加し、ますます会えなくなった。
時々サークルのSNSの投稿写真に写る彼は、どんどん痩せていった。私には何ヶ月も連絡がなかったが、付き合い云々より、彼の生命が心配でならなかった。
別れてもなお人間として尊敬しているのは彼だけ
私は彼を支えたい一心で時々心配のメッセージを送っていたが、それが負担になっていたらしい。
「俺じゃお前を幸せにしてやれない。もう無理だと思う。」
事実上ふられたのだが、私はもう少し頑張らせてほしいと伝えた。それから2ヶ月、遂に私も限界となり、正式に別れを申し出た。
彼女を大事にしなかった彼を責めることもできるが、私のほうも純粋に彼を支え見守り続ける余裕がなかった。
当時はまだ20歳で恋愛への理想もあって当然だったし、苦しい思いをするくらいなら次の人を見つけて楽しい恋愛をしようという考え方もある。しかし、目の前のことに全力を注ぐストイックな彼が好きだったのに、それがかえって別れる原因になってしまったことを、苦々しく思う。
彼とは今でもまれに連絡を取る。私が1年前に送ってなお未読状態のメッセージを見ると、相変わらず仕事や生活で精一杯なのだろうと想像できる。
私もあれから色々な人と付き合ったが、別れてもなお人間として尊敬しているのは彼だけだ。やり直したとしてもきっと同じことの繰り返しになるから、今の関係がベストだと思う。
社会人になってから、恋愛に楽しさだけでなくパートナーシップを求めるようになってきた。彼との経験がそのヒントを与えてくれているような気がしてならない。