中学、いや彼的に言えば小学6年生からの知り合いらしいので、私たちはかれこれ17年の付き合いになる。
彼が笑うと、こちらまで縁起が良くなる気がする。家から家まで徒歩2分。そんな彼は今、何を想っているのだろうか。少し照れくさそうに「愛してる」と、彼女に伝えているのだろうか。

17年間、私たちはおそらく同じような気持ちをいくつも抱いてきたと思う。
中学の頃はお互い違う人を好きだったし、それから別々の進路を歩んでそれぞれの日常を楽しんだ。
それでも、お互い失恋した時は一番に連絡したし、泣きたくなるような日にこそ、ピンポイントで彼は「偶然」現れた。駅の構内だったり、帰り道だったり。
たぶんきっとお互い気づいていたと思う。心地いいとか、安らげるとかそういう雰囲気的なものではなく、「必要」な関係だったこと。

彼からの告白。関係を壊す勇気がなくて、すれ違う二人の思い

私たちの間に何もなかったわけじゃない。
25歳の時、私が大恋愛の末別れた2か月後、彼も大好きだった彼女と別れた。それから少しずつ二人で会う回数が増え、しばらくして彼から告白された。でも、これまでのふたりの関係を壊せるほど、私は強くなかった。元カノに向けられていた愛の深さを知っていたから。肩と肩が触れ合う互いの距離に少しまだ戸惑いを感じてしまったから。
けれど3か月後、彼はあっさり職場の近くのパン屋さんで働く年下の子と付き合い始めていた。
そんなものですか。正直がっかりした。勝手を承知で言いますが、本当は……本当は期待していた。待っていてくれたら……。そんな自分でも飛び込んで来いと言ってくれたら……。失恋に失恋が重なってむしろ怒りさえ覚えた私は、その自己中さが頂点まで達し、腹いせに告白までしていた。少し困ってくれたらいいのに。

それからは、これまで腐れ縁のように結びついていた私たちの「偶然」の糸も切れて、ほとんど会うこともなくなった。会おうと思えば偶然なんて待たずに会えるたった徒歩2分の距離なのに。

もう二度と彼からの「好き」は聞けない。もうすぐ結婚するから

どんどん月日は流れ、私にもようやく彼氏ができ、一年半後に婚約した。仕事が大好きで私のことをよく理解してくれるとても活発な人だ。マリッジブルーはなかったけど、入籍前日はあの彼のことを考えて少し、泣いた。
Instagramでの婚約報告に、あなた「もしあの時、もう一度気持ち伝えてたら付き合えてたかな?」なんて言うから。とうとう終わったんだなって。明日、始まりの日を迎えるのに。
もう二度とあの彼からの「好き」は聞けない。私に向けられた感情の意味の答え合わせもできない。
結婚前夜のないものねだりを歌った好きなアイドルの曲が、私の小さな小さな泣き声を優しくかき消してくれた。

「運命」らしき「偶然」に振り回された私たちは、これから見えていたものを見ないようにして生きていく。
私たちはこうやってお互いの「好き」のタイミングをずらしながら、きっとここまで「友達」をやってきたのだと思う。よくやってきた。
“男女の友情とはすれ違うタイミングがちょうどよい関係”のことらしい。だから「友達」でなければここまで一緒にいられなかったのかもしれない。

私たちは「友達」としてしか互いの人生に存在できない

だから、ふった理由もふられた理由もきっと同じ。「友達」だから。「友達」としてしか互いの人生に存在できないから。

でも、絶対に内緒だけど、墓場まで持っていく案件だけど、来世では一緒になりたいと思う。もしパラレルワールドがあるとすれば、私たちはすでに結婚していて子ども二人いるかも、なんて。

そうそう、意地の悪い私は、めちゃくちゃキレイになってウエディングドレスの写真を送りつけるから、「きれいだね」って笑ってほしい。こっちまで縁起よくなるから。