「ごめんね」と言えていないままの人がいる。
私は、中学のときいつも一緒にいた大親友に「ごめんね」と言えていない。

人と親密になると距離を置きたくなり、親友までも避けてしまった

長年悩んでいることなのだけれど、私は、人と急激に親密になると、距離を置きたくなってしまうらしい。今までに4回ほどそういうことがあって、3回目くらいでこの傾向に気が付いたが、どうやら根本的に治すのは難しいようだ。

今では、“急激に距離を詰めすぎない”ということに気を付けて、対策するしか解決策が見つかっていない。

そして彼女は、私が何の解決策も知らない、1回目の相手だった。

前日まで、学校で過ごす時間のほとんどを隣で過ごしていたその子が、急に苦手な人になってしまったのだ。話しかけられると、ちょっとうっとうしく思えてしまう。教室間を一緒に移動することなんて当然のことだったのに、ついてこられると逃げたくなってしまう。

自分でも理由がよく分からなくて戸惑ったけれど、もし露骨に態度に出してしまえば、相手が傷ついたり、困惑したりするのは目に見えていた。だからなるべく、それまでと変わらないように努めた。

変わらないようにしていたけど、大親友だった彼女は察していた

でも、しばらくして「最近ちょっと避けてる?」と、彼女が聞いてきた。実際には、もう少し遠回しな言い方を彼女はしてくれたのだと記憶しているけれど、その言葉にあまりにドキリとさせられたので、詳細には覚えていないが、そう言われてしまった。

もちろん「そんなことないよ」と私は答えたし、それからもなるべく、前と変わらないふるまいを心掛けた。そうしているうちに3月になり、春休みを経るとクラスが離れた。それ以来、“いつも一緒にいる大親友”から、“会うと話す友人”になってしまった。

大学生になった今、彼女とはほとんど連絡をとらなくなってしまった。それはお互いの心理的な問題ではなく、物理的な距離の問題で、浪人した私との学年の違いや、学部の違いによるものだ。

私がときどきしかこのことを思い出さないように、彼女にとってもこの一件は風化しているだろうと思う。けれど、あの一件がなければ、私たちは学年や学部が違っても頻繁に連絡を取り合い、休日に二人の予定をあわせて遊びに行くような仲だったかもしれない。

彼女を避けてしまって、罪悪感や後悔があるのに…今も謝らずにいる

それに、あれから似たようなことが3回起きてしまったけれど、そのときは自分が前より大人な対応ができたのか、相手が敏感ではなかったのかわからないけれど「避けている」と指摘されるようなことはなかった(もっとも、相手が言わないだけかもしれないから、私が鈍感ではないことが前提になるけれど。でも、相手は変わらず親密に話しかけてくれたのできっと大丈夫だと思っている)。

すごく控えめで繊細な子に「避けてる?」と言わせてしまった最初の一件では、彼女を傷つけたことは間違いない。

そうした罪悪感や後悔があるのに、時間が経ちお互いの物理的な距離が変わっていくのに身を任せて、謝らずにここまで来てしまった。今さら謝っても、嫌なことを思い出させるだけかもしれない。

だから、「ごめんね」の気持ちを込めて「最近どう?」と連絡しようと思う。図々しくないように気を付けながら、少しずつ、かつてのような心の距離を取り戻せればと思う。会っていなかったぶん、話したいことはたくさんあるから。