蕾だった。蕾のように心を閉ざしていた私は、あの頃与えてくれた彼の水を素直に受けとることができなかった。

希望に溢れた高校生活は、中学から仲のいい友達の裏切りにより壊れた

高校に入学してすぐに、私は不登校になった。
中学から仲の良かった友達に裏切られ、同時に高校生活への期待が一瞬にして壊れた。高校に入学してすぐでなければまだよかったのかもしれない。でもその時、まだ私には新しい友達がいなかった。
だけどあの子達には友達がいる。ただただ憎かった。
クラスではもうグループができていて、周りで飛び交うのは楽しそうな声。でも私は自分の席に被さったガラスのコップの中にいるような感覚だった。その中にたったひとり。そんな気がして寂しかった。
それからぱたりと高校には行かなくなった。
担任の先生は保健室登校や、授業をひとつでも出てみたら?と提案してくれた。先生が何度も声をかけてくれるから、二学期から行ってみよう!と心機一転、でもそれはやっぱり…しばらくも続かない。
だんだん自信もなくなってきて、とうとう自分の部屋に閉じこもるようになった。私にとって唯一の安心できる場所に。でもずっと過ごしていると、このままではいけない、私はどうしてこんな子なんだろう、甘えているという劣等感ばかりが怪物みたいに襲ってくる。
苦しい。苦しい。でも外へ出るのが、他人の目が怖い。私は外の世界だけでなく、自分の心からも目を背け続けていた。

唯一顔が見えなくても家まで励ましに来てくれる人が先生だった

それでも私の家へ励ましに来てくれる人が、一人いた。
先生。
私が部屋から出てこなくても、せめて玄関先だけでもと、顔の見えない私に向かって「また来るからね!」と声を張り上げていた。また来るからね。学校来てね、ではなく、来るからね。私が何も持っていなくとも、好かれようとしなくても、私を受けとめてくれるように言ってくれていた。
それなのに私は…ずっと部屋に閉じこもっているばかり。
そんな時。私はひとり、部屋の中で小説の世界にのめり込むようになった。きっかけは現実逃避だったのかもしれない。だけど次第に、私も文章を書いてみようと思うようになっていった。17歳。青い果実のようにまだまだ人生経験も少なく未熟だけれど、その時だからこそ、私だからこそ書ける文章があると思って。
閉じこもっていた時は自分の心の内に棲みついた怪物と戦うために文章を書いていた。その時は、ただそれだけ。
とうとう単位も足らず、このままでは留年か退学。
先生は家に通い続けてくれていたけれど、私は結局、退学の道を選択した。

先生がさらっと言った言葉を聞いた時、私の心の中で花が咲いた

退学する前に、この後はどうするのかと先生に聞かれた。私は高卒認定を取得していたので、通信制大学を選んだ。通信制大学なんて、社会人が通うところだ、試験を受けないなんて甘えている。ネットでどう思われるか検索すると、数々の言葉から私はそう解釈した。
それでも。
先生は応援すると言ってくれた。そして志願書の文を一緒に考えたい、と。数日後、私は志願書にどうしてその大学にしたのか自分の言葉で文章を書いて、先生の所へ持っていった。
それを見た先生は。文章がうまいと言ってくれた。お世辞だったのかもしれない。でも、すごく嬉しかった。
それから色んな話をした。私は閉じこもってしまって他人を気にしすぎているのかもしれないと自分の気持ちを吐露した。すると、先生は、それは繊細だからだよ、小説家とかにはそういう感覚が大切だけどね、とさらっと言った。
その言葉を聞いた時、私の心の中で花が咲いた。
小説家になろう、やってみたい。外にこの想いを伝えよう、と。
もう一度先生に会えたなら、家に通い続けて声をかけ続けてくれたあの時は、向き合えなくてごめんなさいと言いたい。
ありがとうという花束と一緒に。