「ごめん、もう疲れた」
涙を見せた彼。絶対に忘れることのできない別れ。だけど、この別れが今の私を作ってくれている。
2年付き合った人と別れた。ふられてしまった。
ふられた理由は、私が「絵に描いたようなメンヘラ」だったから。
束縛しないと、彼がそばにいてくれないと不安だった
彼のことが好き。愛してる。もっと好きになってほしい。愛されたい。
付き合って、月日が経ってお互いのことを知れば知るほど、欲望が溢れてしまった。
休みの日は一緒にいたいし、会えない夜は電話をしたい。友達とも疎遠になった。趣味は「彼といること」だった。
彼が女の子と連絡するのは禁止。女の子がいる飲み会なんてもってのほか。携帯チェック、GPSで居場所の共有も当たり前。私しか見ないで欲しかった。元カノのSNSも特定した。
今考えると地獄みたいだ。
「好きだよ」「安心して」「重くてもいいよ」
優しい笑顔でそう言ってくれていた彼も、いつの日からか縛られて苦しそうな表情をするようになった。
ちゃんと愛してくれていたのに、それに満足できなくて。
勝手に嫉妬して、彼を縛り付けて、縛りすぎて、喧嘩になって、それで彼が離れていくことが怖くて、また縛り付ける。そんな悪循環から抜け出せなかった。
「こんなに束縛してたらいつか離れていっちゃう」と頭ではわかっていても、愛されている証拠がないと、束縛しないと、彼がそばにいてくれないと不安だった。一人になるのが怖かった。
「好きだけど、もう無理だよ。ごめん、もう疲れた」
よくこんな関係で2年も持ったなと思う。
当然こんな感じで長続きするわけなく、秋の日の夜、ふられた。当たり前の結果だ。
「好きだけど、もう無理だよ。ごめん、もう疲れた」
彼は泣いていた。彼に言われたこの言葉が忘れられない。
自業自得。2年分の不満が溜まった彼の決意は固かった。私の必死の説得も虚しく、2年分の思い出を持って彼はいなくなった。
こうして私はふられてしまった。
彼がいなくなったら生きていけないと思った。学校に行っては泣き、バイト先でも泣き、母の作ったご飯を食べては泣き、「元カレ 復縁したい」「復縁できる方法」で検索する日々。読めば復縁できるという怪しいサイトに登録した。
それくらい、彼が私の人生の全てだった。
きっとあの時私をふってくれた彼が、私を大人にしてくれた
あれから3年が経った。彼がいないと生きていけなかった私は、今も生きている。
あの時、恋愛に全振りしていた私は、今、勉強と、趣味と、友達と、恋愛をバランスよく楽しめるようになった。
3年経って、これが大人になるということなのだろうか。
いや、違う。きっとあの時私をふってくれた彼が、私を大人にしてくれたんだな、と思う。
彼とはふられたあの日から一回も会っていない。
彼は今幸せだろうか。彼の優しさに漬け込んだ私のような女にまた苦しめられていないだろうか。どうか幸せでいてください。
彼に苦しい2年間を過ごさせてしまって、申し訳なかったと思う。
世界で一番好きで、私の人生の全てだった彼を失ってよかったと今は思う。彼のためにも、私のためにも。
メンヘラを治す一番の特効薬は、「失うこと」なんだ。彼が気づかせてくれた。
退会のやり方がわからず放置している、怪しい復縁サイトからいまだにメールが届く。こんな馬鹿げたものを本気で頼るほど、誰かに依存していたんだと今は笑える。
彼との2年間と、ふられた経験が今の私、これからの私を作ってくれている。
ふってくれて、ありがとう。強がりかもしれないけど、胸を張って言える。