社会人生活4年目が終わりに近づいている。ついこの間入社したと思っていたものの、年下がどんどん入社してきて、後輩の顔と名前が一致しないこともしばしばだ。
そういえば、来年からちょっとした役職がつく予定で、今より少しだけお給料が増えるかもしれない。
女性が社会に出て働く理由とは。そう考えたとき、私はある1人の人物が頭に浮かぶ。
それは大学4年生の冬に短期アルバイトで出会ったアベさんという60歳の女性である。
アベさんの第一印象は「仕事ができないおばあちゃん」
アルバイトの仕事内容はパソコンを使った簡単なデータ入力だった。バイトメンバーのほとんどが主婦や学生だった中、アベさんだけがパソコンに慣れていない様子だった。
わからないことは恥ずかしがらず何度も手を挙げ質問する姿に、周囲の人は「さっきも言いましたよね?」「これもできないんですか?」と厳しい口調だった。
自分の息子や娘と同年代であろう人物から冷たくされるアベさんの姿を見て、「可哀そうだな」「60歳にもなって仕事で怒られたくないな」と思った。
正直私もアベさんの第一印象は「仕事ができないおばあちゃん」というイメージだった。
自由に生きるアベさんご夫婦の姿に、私は興味津々だった
バイトのお昼休憩の時間、たまたま同じ席でお弁当を食べたことから少しだけ距離が近くなり、アベさんが「仕事ができないおばあちゃん」ではなく「すごい人」だということを知った。
現役時代は医療関係のお仕事をしており職場結婚。子どもを育てながらも仕事を続け、昨年退職。
田舎暮らしが好きなアベさんと、都会暮らしが好きな旦那さんは、とても仲が良いのだが普段は別居しており、週末にはどちらかがどちらかに会いに行くという生活をしているとのことだった。
結婚してもお互い信頼し合い、自由に生きるアベさんご夫婦の姿に、そんな生き方もあるんだと私は興味津々だった。
何事にも全力で取り組みたい。悔いなく今を生きていきたい
「私、社会に出て働きたいというあなたみたいな女性はすごく応援したくなるの」
春から社会人になることへの不安を思い切って打ち明けると、応援の言葉と共に自分の体験を話してくれた。
子どもができたとき何度も頭を下げて産休と育休をとらせてもらったこと、子どもが突然熱を出した時にも何度も頭を下げたこと。
どんなに大変な環境であっても、妻・母親としての人生と、社会人としての自分の人生をどちらも全力で生きるアベさんの姿を知り、尊敬した。
そして「私の頃より、今はもっと女性が働きやすい社会になっているはずよ」
「辛かったら会社を辞めても良いと思うの。ただ働くことは辞めないで。頑張ってね!」
その言葉に背中を押された。人生に迷ったとき、仕事が辛いと感じたとき、アベさんのことを思い出し、頑張ろうと前を向くことができている。
もうすぐ27歳になる私は、結婚を諦めてはいない。そして社会人としての人生も諦めてはいない。
誰かのために生きる人生と、自分のために生きる人生を両立したい、そんな難しい野望を抱いている。1度しかない人生、何かを諦めることはしたくないし、何事にも全力で取り組みたい。悔いなく今を生きていきたい、そう思えるのは、あの出会いがあったからだと思う。
私が働く理由、それは何歳になっても向上心を忘れずに自分の可能性を信じることができる自分でいたいから。