大学1年、冬。ほんの少しの期間だけお付き合いした方がいた。
コーヒーが好きな人で、私が苦手なブラックコーヒーを好んだ。大学の講義にはコーヒーのにおいを纏わせてきたから、隣に座った時には顔を上げなくても彼が来たことが分かった。

そのときは“彼氏”という存在ができるのが初めてで、“リア充”という言葉を信じ込んで彼氏ができれば日常がキラキラと光り出し、幸せの量が増えるものだと思い込んでいた。だから私の行動はすべて相手を思ったものではなく、彼を使って自分の幸せを大きくするためのものだった。

だからふられた。

恋愛は人間関係のひとつだと気付かなかった私の「自分中心」の行動一覧

別れを切り出したのは私だったけど、ふられたのは私だと今でも思っている。
自分勝手なわがままな行為を繰り返して、本当に申し訳ないことをした。そもそも恋愛とは人間関係の種類のひとつで、人間関係は相手を中心にして考えなければならないと気付くのは随分後のことになる。

お付き合いしていた当時の行動はこんな感じ。

  • ご飯を一緒に食べに行くとき、店選びを失敗したくないのでお店選びは相手に任せる。
  • 食事では緊張してほとんど話さない。
  • ラインの返信が遅いと返信欲しさにスタンプを送る。
  • 家に泊まりにきた日と翌朝には、料理ができることをアピールしたくて自分の得意料理を振舞う。
  • 誕生日プレゼントはネットでたくさん調査をした結果、“彼氏が喜ぶ誕生日ランキング”上位に必ず入るちょっと高級なお財布。
  • 彼が休んだ大学の講義の資料やノートを送り、記名式で出席を取る場合には代わりに記名する。

これらはすべて、“自分”を中心とした行動である。

反省を踏まえ、これらの行動の軸を自分から相手に変えると

“相手”を中心にした行動を心掛けるとどうだろうか。

  • ご飯を一緒に食べに行くとき、お店を失敗したくないという気持ちは彼にもあるはずである。だったら二人で相談して二人で決め、失敗だったら一緒に笑い飛ばすぐらいの方が気は楽のはず。
  • 食事で話さない人と一緒に食べると、全く楽しくない。いろんな話を振ってくれたり聞いてくれたりする方が良いに決まっている。
  • 忙しいときにラインを返せずにいるときに、追加でスタンプを送られるとそれは圧力にもストレスにもなる。静かに待ってくれて、時間が空いたときに楽しく連絡を取ったり電話出来たりする相手の方が自然と連絡したいと思うだろう。
  • 実は私の得意料理は前日と同じメニューだったかもしれないし、朝はコーヒーで済ませる派だったから、朝ごはんを用意されるのは嬉しくなかったかもしれない。さりげなく事前に食べたいものや朝食が必要かを聞いてくれた方が無駄なすれ違いが減って助かる。
  • 財布は数か月前に新調したばかりだったかもしれないから、名刺入れの方が欲しかったかもしれない。
  • 私が大学の講義の世話を焼くことに甘えてしまい、彼の学力は下がっていたから、本当に余計なお世話だったかもしれない。

このように振り返ると、私は、人間関係の初歩的な心構えである“相手を中心に考える”ことができていなかった。

過ちに気付いたはずなのに、今でも時々コーヒーの香りを思い出す

人間関係での行動は、自分ではなく相手を始点とした行動にしなくてはならない。“自分が相手だったらどう思うか考えなさい”という、幼稚園で教わるようなことである。

でも私はそれが二十歳ごろまで出来ていなかった上に、その考え方から外れていることにすら気づかなかった。
染みついた考え方とは恐ろしいもので、この間違いに気づいて反省し二度と繰り返さないと心に決めた何年もあとでも、自分中心な行動をしているとハッと気づくことが多々ある。
その度に、あの時と同じだという後悔の念とともに、少しだけコーヒーの香りを思い出す。