わたしは主張したい。
気持ちよくマッサージを受け、サウナでととのい、ディープリラックス状態で読書しまくるためには、「アンチテーゼとして労働」が必要だ、と。

私はそこそこ働くサイドの人間だ。
植物がよく育つには、適度なストレスが必要だと聞く。
身体も同じで、マッサージを最高に気持ちよく受けられる状態までもっていくためには、肉体疲労、コリ、むくみ、脳ストレスが必要だ。
そして湯水のようにマッサージに課金できる資金は、労働がデリバリーしてくれる。

マッサージを最高に気持ちよく受けられるのは気力だけで走った残業後

一時期、週1マッサージ、週2町の銭湯でサウナ・水風呂の交互浴に通っていたリラクゼーションジャンキーだった。

マッサージ好きの方には経験があるかもしれないが、マッサージが本当に最高に気持ちよく感じられるのは週の真ん中でタスクが爆発し、もう気力だけで走り始めた残業後。
頭もかち割れ背中には硬デカ鉄板がいて、指を入れてもレスポンスがない。
夏は冷房で、冬はどれだけ温めても体温は35度台をうろうろする冷えで、足の血流は片道切符になっており、ポンプ役も「もう無理っす」とばかりにふくらはぎが朝の1.5倍に。

そんな日に心底信頼しているバリニーズマッサージの暦20年ベテランお姉さん(ちなみに、地域のマッサージ店は数十店舗訪問して、個人レベルでぶっちぎりで一番上手いと感じたセラピストさん)の予約が取れた日には、ガンガンタスク消化した挙句自主提案もブチ込めるってものである。

いろんなマッサージ店に行き、「ゴリゴリですね~」とおすすめストレッチやセルフケアの方法などいろいろ教えてもらったが、ごめんなさい、全部言われたことあるし、全部素直にやってるんですよ。それでだめだからここへ来てるんです。と反発したくなり、店から足が遠のく。
マッサージは「ああ、今日受けないともうだめ」というタイミングで予約を取るので、先述のベテランセラピストさんはもう埋まってしまっていることが多い。
第二の布陣で数店舗の候補は常に用意しており、それでも1~2ヶ月に1軒ほどは新規開拓しリストに入れうるお店かどうかチェックするのが楽しい。

身体感覚一本勝負「なにもしない」ができる町の銭湯のサウナも外せない 

また、そもそも背中の鉄板をつくるまいと通い始めたサウナにもハマっていた。
中でも、サウナ施設というより町の銭湯の中にあるサウナ。
交互浴で得られる全身の血管を熱と冷気がかけめぐる心地よさと、「なにもしない」を堂々としに行けることが救いだった。

銭湯では他人をジロジロ見ることはマナー違反である。
すぐ人の粗探しをしたり、休日は放っておいたら朝起きてから眠りにつくまでツイッターを開きっぱなしのこともある私だが、サウナではどちらも強制的に取り上げられるので身体感覚一本勝負ができる。感覚を研ぎ澄まされるので、日常ではなかなかまとまらない自己問答に決着をつけられたりする。

そして、リラックス状態で読書すると、いつもより没頭できる。そういえばあの本にもこの概念出てきていたな、など点を点を結びつけるスピードも少し上がる気がしている。

そういうわけで、マッサージもサウナも、私に欠かすことのできないものだ。

マッサージのために仕事をしてるのに!あれ、目的と手段が循環してるな

ここ1年ほどは、感染症対策によりテレワーク期間が増えたため、職場からそのまま行けそうなマッサージ店やサウナに通っていたところ、数ヶ月単位で訪問を自粛していた。
それでも無限に増殖する仕事。ありがたいことではある。コロナ禍でも仕事が忙しいなんて。
ただ、自分のキャパの向こう側に行ってしまったときにもマッサージに行けない、サウナに行けない、となってしまったのはかなり精神にも悪影響を与えたようで、服薬しないと全く眠れなくなってしまった。

気持ちよくマッサージに行きたくて仕事をしているのに、マッサージにも行けずこんなに働くのは意味がわからない。
大人数の飲み会が出来ないのがつらい、みたいな人に表面だけ共感して実際のところ全然その心理が理解できなかったのだけれど、彼らにとっての飲み会が私にとってのマッサージと同じポジションだったのなら少し納得が行く。世知辛いな。

マッサージとサウナは、自分の体調とお店の対策や客層を見て、おそるおそる行き始めている。
自粛する前と比べると、明らかにコリがラスボスレベルまで強化されていて、30歳になる頃には身体のすべてをコリに支配されるのではないかという恐るべきペースだ。
滞らずマッサージに課金し続ける経済力を失わないこと。それが働く理由。

手段の目的化、ということばがあるが、私にあてはめると「労働のための癒し」か「癒しのための労働か」という手段と目的が循環しているような感じか。
本末転倒といえばそうかもしれないが、これが飲み会だったら心当たりがある人も多いのではなかろうか。
お酒好きの人が、週末飲むために頑張って仕事するのと同じではないだろうか。

そして、もうひとつ。
私の肩に魔物がいれば、好きなセラピストさんに仕事を作り続けられる。
私にとっての働く理由は、誰かの仕事をなくさない理由になる。
と、肯定しないとしんどめのフェーズにいるので、一旦マッサージで肩の力を抜こうと思う。