みなさんは、就職活動はうまくやれますか?
わたしはからきし駄目でした。

「社会に出ても何もできない」。労働に強い苦手意識を持っていました

学校の勉強はまあまあ普通、大学もそれっぽい感じで入学できたまではいいけれど、わたしは仕事を決めることができませんでした。というよりも、仕事を選ぶ上で、相手から受けるであろうジャッジに耐えられなかったというほうが正しいのかもしれません。

大学くらいまでは親の意向を汲み取って将来を選んだり、あるいはわたしの母がリサーチしてくれていたので、本当に何も考える必要がなかったのです。

大学生の時はバイトをクビになったり、仕事ができなさすぎていびられることもあったので、こんな自分はきっと社会に出ても何もできない人間なんだと思い、労働に対して強い苦手意識を持っていました。大学を出たら就職先を探さないといけないのかと思うとあまりにも怖ろしかったのです。この時にはもう、「それっぽい感じ」ができませんでした。

マニュアルにあるような文章と自分の人生とがあまりにもかけ離れているように感じ、人に誇れることなんてないし社会は自分を必要としていないだろうという気分になりました。

とにかく「面接で嘘をつきたくない」「演じたくない」と強く思ってしまい、就活ができません。当時就職難で皆何十社も受ける時代でしたが、わたしは5社しか受けることができず、そしてどれも受かりませんでした。

真面目でしっかりした人格にと思い、そう見せるべくかなり無理をした

やりたい仕事がわからなかったので、知人のすすめで映画会社のインターンに応募したところ採用され、地方からいきなり東京に出てはたらくことになりました。当然母には反対されましたが、当時アルバイトを3つかけもちしていたため資金を完全に自分で工面できたのでしれっと上京。決めたことを淡々とやってしまえば、親も胸ぐらを掴んで止めてくるようなこともないんだなということを知りました。

おそらく人生で初めて「親の反対を押し切って何かをした」体験は、はたらくことでした。

真面目な自分、別な人格の自分でなければ雇ってもらえないと思っていたので、不器用ながらとにかく一生懸命やりました。

その後インターンを終え、就職先は決まらないまま。卒業間近の3月、かなりギリギリのタイミングでしたが、流れで入れそうな地方の会社に就職。その後26歳で別の会社に転職しました。そして、知人のつながりで見つけたその会社で今もはたらいています。その転職のときは再度上京ということもあり、キャリアやスキルに自信がないわたしは本来の自分よりも真面目でしっかりした人格にならないといけないと思い、そう見せるべくかなり無理をしていました。

「できない自分からスタートするんだ」と気づいたら、楽になった

しかし、あるとき自分らしくいる状態で話をしたほうがいいんだということに気付き始めます。
会社に優秀なインターン生が入ってくるようになってから、彼らのすなおさとまっすぐな感じに驚きました。もちろん彼らはとても優秀で、まさに1を聞いて10を知るという感じの人たちでしたが、変に無理をしているわけでもなく、できないことにはできないと言い、マニュアル通りの受け答えのような感じはありません。けれども居心地の良いコミュニケーションをしていました。

あまりにも自然にはたらいていたので、「あ、これでいいんだな」と驚きました。
「はたらくことは、自分として生きることの延長なんだ」ということを理解したのがその時だったような気がします。

わたしは大して仕事もできるわけではなく、そして周囲には「仕事イコール自己実現」というように人生をかけて働いている人やアーティストが多いので日々劣等感も感じますが、わたしは「このできない自分の存在からスタートするんだ」ということに気がついたあのときから、職場でのコミュニケーションがずっと楽になりました。

自分を卑下し、よく見せようとする必要は、本当はない気がします

もちろんよりよくなるための努力は必要ですが、自分をよく見せる必要も、マニュアル通りのコミュニケーションをする人になる必要もない。そう思えるようになったのは、もしかしたらインターン生のおかげだけではなく、社会人生活の中で自分の中に小さな自信やスキルがたまった結果、無理をしなくても少なからず何かが「できる」状態まで上がっていたからかもしれません。

けれど、もし何もできないかもしれないと思っても、自分を卑下したり、あるいはよく見せようとする必要は、本当はないような気がします。

わたしにとってはたらく理由のいちばんはお金をもらうことだけれど、お金を稼ぐとか相手の期待にこたえるとか、そういう気持ちを抜きにしたほうがわたしにはやりやすい。

はたらくことは、自分が生きているということの延長だから。