キリン
お花屋さん
おジャ魔女どれみのドレミちゃん
看護婦さん
百人一首の最年少クイーン
保母さん

これらはわたしが小さい頃から社会人になるまでに思い描いた将来の夢だ。そんないくつもの夢を持っていたわたしが短大卒業後、最初に就職した企業は金融機関だった。

小学5年生のとき、自分の家庭は決して裕福でないと認識した

小さい頃から両親は(特に母親は)わたしに「うちの家はお金がない」とよく言っていた。だけど、食事も不自由なく食べているし、学校にも通えているし、洋服もちゃんとしたものを着せてもらえているし、わたしはごく普通の家庭に生まれたと思っていた。だけど。

小学生の時、クラスである数人だけ茶封筒が配布される機会が数回あった。わたしはその対象に入っていた。学年が上がるにつれてその封筒の中身は収入の少ない家庭に対して行われる“就学援助”という制度の内容が記されているものだと知った。
「わたしの家ってお金ないんだ」。その時小学5年生だったわたしは、はっきりと自分の家庭は決して裕福でないということを認識した。

小学校・中学校時代は就学援助制度のおかげでわたしは何不自由なく、周りの友人たちと同じように勉強や部活に励み、修学旅行にも行くことができた。本当に両親にも就学援助制度にも感謝している。

志望した、県外の四年制大学に進学したいという夢は諦めた

高校は公立の高校に推薦で入学できたが、わたしが高校入学当時は高校無償化という制度もなく、奨学金をわたしの母は申し込んだ。わたしの母校は進学校で、ほとんどの学生が卒業後は四年制の大学に進学する。当時、高校で商業についても学んでいたわたしには県外の志望する学科のある四年制大学に進学したいという夢があった。

しかし、母はわたしの県外の大学進学について金銭的な面でも、「近くにいてほしい」と、精神的な面でも大反対した。奨学金は経済的に進学が難しい学生が学べるように支援するという、全く悪いものではないけれど、当時奨学金を利用していたわたしは「奨学金=借金」というマイナスなイメージしか持っていなかった。

結局わたしが折れて、自力で学費の支払いが可能な地元の夜間の短期大学に進学した。
進学先では、夜間だけどそんなことも関係なく、自分の学びたいこともたくさん学ぶことができたし、卒業後5年以上経っても何でも話せる大切な友人に出会うことも出来た。何より“自力で学費を稼いでそのお金で短大に通った”という事実が自分にとって誇らしかったし、自信に繋がった。夜間の短大に進学したことで得たものはたくさんあった。
だけど、当時のわたしが奨学金を借りてでも、希望する県外の四年制大学に進学していればまた違う未来が待っていたかもしれない。という思いがいつまでも拭いきれずにいる。

当時、短大2年生だった自分が就職活動を始めるにあたってなにより重視したことは「安定」だった。安定した収入が手に入り、両親が自分のことを誇りに思ってくれそう。という理由で安定していてお堅い真面目なイメージを持つ金融機関の会社説明会を申し込んだ。説明会で話をしてくれた先輩社員に憧れて、自分もそうなりたいと、その企業に就職した。

安定した金融機関での最初の会社員生活はある理由で3年半ほどで終わってしまったが、その後も、とある金融関係の企業に再就職した。なぜ再就職先も金融関係だったのかうまく説明が出来ないが、わたしは無意識のうちにお金に執着していて、お金に関わる会社で働きたいという思いを持っていたのかもしれない。

人生は選択の連続。その選択を「お金がない」で諦めたくない

今の給料は手取りで約14万円。金融関係の職業は確かに安定はしている。だけどもらえるお給料はイメージに反してそんなに多くないのが現実だ。そんな一般的にみると薄給のわたしだけど、毎月決まった金額をせっせと貯金している。社会人になってからコツコツ始めた貯金額は同年代の平均額より少し上回ったことが何より嬉しくてそれが貯金のモチベーションになっている。

「今日の朝ご飯はパンにしようかな?ごはんにしようかな?」
「今日はどんな服を着ていこう?」
「どんな企業に就職しようかな?」
「マイカーはどんな車種にしようかな?」
「結婚相手はあなたでいいのかしら?」
「将来はどこに住もうかな?賃貸?マイホーム?」

人生は常に選択の連続だ。その選択を「お金がない」からという理由で諦めたくない。
わたしにはいくつか夢がある。
お金がかからずに叶えられそうな夢もあるけど、お金がないと叶えることが難しいであろう夢もある。わたしは現在独身で子どももいない。だけど、将来もしも結婚して家族で暮らす家が欲しくなったら?子どもが生まれて「これがしたい」という夢を持ったら?きっと家も購入したくなるし、子どもの夢は応援したくなるだろう。

このまま独身でいたとしても、コロナが落ち着いたら行ってみたい国もあるし、今の職場で働くことが出来なくなって仕事を突然辞めることもあるかもしれない。そんな時は、コツコツ貯めたお金で旅に出たいし、ある程度の貯金があればプータローになってもまたリスタートを切りたい。選択肢が増えることで確実に幸せは増えるし、不安は減ると思う。

わたしは高校生のとき、お金がないという理由で県外への大学進学という夢を諦めた。約10年前に自分が下した選択に今もわたしは少し後悔している。
どんな時も自分の下した選択に後悔なんてしたくない。だからわたしは今日も働く。