なんとなく友達のまま大人になっていくのかなって思っていた彼と、付き合えることになった日のことは今でもよく覚えてる。

私は初恋で初彼で、でも彼は恋も彼女も初めてではない経験者。彼と一緒にいるときはいつも何も考えれないくらいドキドキしてた。でも一人になると「私なんかでいいのか?」「カレカノって何するものなの??」って頭が痛くなるほど悩んでた。

もったいない位素敵な人。隣に立つのがいつしか辛くなっていった

彼は私にはもったいない位素敵な人で、隣に立つのがいつしか辛くなっていった。「私なんかが…」って思い出したら切りがなくて、だんだん彼と一緒にいても楽しくなくなってきて、笑えなくなっていた。

放課後の公園デートで「俺の好きなところ教えて」と言われた。

この間はいっぱい言えていた。笑うときに顔がくしゃってなるところ、やんちゃで口が悪いのにレディファーストで紳士なところ、しっかりしてそうでしてないところ、結構甘えたな所、なんでもさらっと出来ちゃうところ……数えきれないほどたくさんある。一晩あっても足りないくらい。

でもその時は何も浮かんでこなかった。あんなにたくさんあったのに一つも出てこなかった。一人でパニックになりながら出した答えが「全部」。まだ中学生でスマホを持っていなかった私にとって彼と二人っきりでとれるコミュニケーションは放課後のデートだけ。それなのに、好きなところの一つも言えない。そんな自分に呆れた。「具体的に言って」っと私の答えを楽しみにしてにやけながら聞いてくる彼の顔が悪魔のように見えて悲しかった。いつもならそんな彼の顔を見てかわいいって好きだなって思うはずなのに、そう思えないことが悲しくって、彼は悪くないのに、私が悪いのに彼が悪者に見えてしまう私が嫌で嫌でたまらなかった。

私は知らないふりをした。彼を悪者にしてしまう自分を見たくなかった

それからは友達の所に逃げるようになった。学校でも彼と顔を合わせないように生活をした。できるだけ出会わないように必死だった。その時彼が私を心配してくれていることも、私に何か悪いことしたんじゃないかと悩んでいたことも知っていた。でも私は知らないふりをした。彼のことを悪者にしてしまう自分を見たくなかったから。彼のためではなく私のためだけに私は必死になっていた。ちょうど受験の追い込み時期になり、塾漬けの毎日になったことを、私は彼と一緒にいれない理由ができたとどこかほっとしていた。

受験まであと一か月位になったころ、友達伝いに「別れよう」の言葉を聞いた。彼のことは好きだったからショックだった。どうにかやり直せないだろうかとバカみたいなことも考えた。ふられた理由は私しかいないのに。

彼とはSNSで繋がっているのに、連絡も謝罪も出来ていない

彼から別れ話を出させてしまったことや、彼を別れる決意をするまで追い込んでしまったことに罪悪感を感じるのと同時に、なぜかほっとした。彼と一緒に入れなくなったことになのか、彼のことで悩まなくてよくなったことになのか、彼にもう我慢も悩みもさせなくて済むことになのか、彼の時間を私のことに取らせなくてすむようになったことになのか、私が私に呆れなくて済むようになったからなのか、何にほっとしたのか分からない。ただ、今考えるとすべてのことに対してなのかなとも思うが、分からないままだ。

あれから彼とは何もなく顔見知り程度の関係に戻った。

今彼とはラインもインスタもツイッターも繋がっているけど、連絡出来ず謝罪をすることが出来ていない。

彼はもう忘れたことなのかもしれないが、私は彼との初恋を一生忘れることは出来ないと思う。
自分がどれだけ不器用で自分勝手な人間なのかを知った、甘くも酸っぱくもない、ほろ苦い初恋。