中学1年から高校3年まで、5年間付き合った人がいる。交換日記から始まり、みんなと下校時間をずらして、別の場所で待ち合わせて一緒に帰ったり、休みの日に公園で半日喋り倒したり。こう言ったらどう思うかな。この文章は書かないほうがいいかな。一言一句に悩む初々しい恋愛を、当時はドキドキしながら楽しんでいた。
彼の呪縛からは、一生逃れられないんだろうなと思っていた
同じ中学を卒業し、彼は技術系、私は進学校に進学した。お互い部活も勉強も忙しく、2、3ヶ月に一回しか会えなくなった。その待ちに待ったデートも、待ち合わせの数時間後に「コーチに居残り練習命じられてて……」とドタキャン。真冬の公園で3時間以上待ちぼうけしても、頑張ってる彼の邪魔をしたらいけないと、「分かった!頑張ってね」と物分りの良い彼女を演じていた。それがベストだと思っていた。
センター試験を控えた3年生。久々に会った彼に「成績が思うように伸びなくて……」と話をした。彼が忙しいときに私が応援したように、今度は私の背中を押して欲しかった。しかし彼の口から出たのは「結果が出ないのは努力が足りないからだよ」。それくらい自分でも分かっていた。好きな人に応援して欲しかっただけなのに。私の本気の悩みを日常の雑談レベルでしか受け取っていない彼を見て、何かが吹っ切れた。
帰宅してすぐ手紙を書き、投函してすぐ連絡先を消した。空っぽの心を埋めるように、死に物狂いで勉強した。
自分から別れを告げたくせに、進学後も未練だけは何ヶ月も有り余っていた。相手も上京していると聞き、似た後ろ姿を見かけては追いかけて、そんなことしたって話しかけられないだろうと我にかえっては泣いた。どの思い出を振り返っても彼がいることが辛かった。彼の呪縛からは、一生逃れられないんだろうなと思っていた。それくらい、全力で好きだった。
「あのときはごめん」ポツリと言われた
そんな私にも、1年の冬に彼氏が出来た。アルバイト先の2歳年上の大学生。彼にはなぜか、嫌われる不安や振られる不安がない。精神的にも安定していて、お互いバイトや学業に思う存分取り組める。あの時みたいに、一言一句気を遣わなくていい。その頃には、元カレより先に結婚してやる!なんてことは思わなくなっていた。
充実した大学生活を送りながら、めでたく成人式を迎えた。会いたくなくて逃げ回っていたが、狭い田舎で、顔を合わせないなんて無理な環境だった。「あのときはごめん」ポツリと言われた。「子供だったと思ってる」「でも、子供ながらにちゃんと好きだった」と。高卒で就職した彼は社会人2年目。私の知らない、大人な顔つきになっていた。世間から見たら、20歳なんてまだまだ子供だろう。でも、お互いを許せたその夜は、自分たちがすごく大人になったように感じた。
相手にも、新しい彼女が出来ていた。「君と一緒で海が好きで、よく連れて行ってと言われるんだ」「君との共通点が多くて」奇遇だな、私も。
私の一世一代の恋だったのだと思う
多分、一生忘れることはないだろう。今までもこれからも、私の一世一代の恋だったのだと思う。しかし、もう思い出す度に苦しくなったりはしない。あの時があったから今があると、今ならはっきり思える。「あの頃は幼かったなあ」と微笑ましく思いながら、今の大切な人と新しい思い出を上書きしていくのも、悪くはないだろう。
願わくば、お互い幸せに。