人事部長がふたこと目に放ったのは、信じがたい言葉だった。
「来月からこのセンターに配属だから。頑張ってね」
挨拶さながら予想だにしない痛烈な一撃に、私はその場で声をあげて泣いた。

現場での作業は驚きの連続。単純なことなんて一つもなかった

入社したのはニッチな業種ながら業界大手の安定企業。
事業拠点は全国にある。それでも研修中の私は、都内の本社でバリキャリOLとして働く
1ヶ月後の自分を信じて疑わなかった。
だって関連の分野で研究をかじったのだし、何よりインテリだもの作業には向かない。
ありえない。まさに青天の霹靂。

それからの毎日は、驚きの連続だった。
なぜかって、現場には単純なことなんて一つもなかったからだ。

上司に怒られ、先輩とぶつかり、失敗ばかりの空回りの日々。
ストレスで奥歯を噛み締め、歯が欠けていたこともあった。

特にパート社員とのバトルには鬼気迫るものがあった。
遂にある日、ベテランのリーダー格パート社員と激しく衝突をした。
ほんの些細な作業だったけれど、どうしても自分ではもっと適切な手順があると考え余計な口出しをしてしまったのだ。
長年続けてきたことを否定されたと彼女は思ったのだろう、激昂し罵倒してきた。
その場はなんとか黙ってやり過ごしたけれど、悔しくて悲しくて情けないこと。
帰り道の車内で大きな声で叫びながら嗚咽した。運転が苦手なのに車通勤で、苦痛に拍車がかかかる。呼吸が上手くできず視界も涙で霞んで怖い。全身で言いようのない痛みも感じている。
そんな最悪の一日を終えた夜なのに、なぜか本社に異動する夢を見た。目覚めてすぐに涙が溢れた。

チャイムを待ちわびていた時、上司から呼び出し。どんとこいの境地

センターでは終業のチャイムが鳴る。
学生生活みたいで煩わしいと思いつつも、いつものようにその時間を待ちわびる。
その時突然ピッチが鳴った。上司からの呼び出しだ。
毎度恒例、思い当たることが多すぎて、もはやどんとこいの境地である。

奥の会議室に入るとなぜかセンター長もいて、明らかにいつもと様子が違う。
二人の向かいに恐る恐る着席すると、センター長はおもむろに口を開いた。
「来月から本社のコンサル部で頑張ってもらうで」
センター配属から1年と半年、絶望の気分の夜に夢見た光景がそこにはあった。

異動から2年、相変わらず目まぐるしい日々を送っている。
本社のコンサル部に配属の1年後、なんと花形部署の担当営業に異動となった。
運よく研究活動にもGOサインをいただき、公私問わずフル稼働中。

失敗が怖い。でも誰もやったことがないなら自分で拓くしかない

私にとっての働く意味は、私を、そして周りの人を幸せにすることだ。
自分が今やっていることが正しいかなんて分からない。
勝気な発言をするけれど、本当はいつだって不安だ。失敗が怖い。またダメかもしれない。
それでも、誰もやったことがないなら自分で拓くしかない。それは使命だとも感じている。

そうやって私が踏み散らかした道なき道が、いつか誰もが当たり前に通れる道であるために。
今日も踏ん張って頑張って、働くのです。